バッドショットだけを許す:1回の攻撃で1回のバッドショット
しっかり守れていたのに決められて、試合のたびに選手を責めてしまう。あのとき、正直なところ、good defense と言いながら、どこか引っかかるものがありました。
良い守備をした。でも入った。どこが悪かったのか。何を改善すればいいのか。
以前は「失点しなければ良い守備」だと思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、そうではないということでした。
見ていたのは「失点したかどうか」という結果。どんなシュートを打たせたかという”プロセス”を見ていなかった。
だから評価がぶれていた。プロセスの判断を起点に、守り、そして結果へつながる連鎖を見ていなかったんです。
練習ではできるのに試合で消える、あれです。後半になると同じパターンで失点が重なる。守備の形は整っている。でも試合後、何を指摘すれば良いのか分からなくなる。その正体が、ずっと曖昧なままでした。
決められるのは、選手の才能や根性の問題ではありません。守備の評価基準が結果に寄っていた問題でした。
守備を「失点を防ぐ動き方」として設計するチームは少なくありません。でも、それだと評価がいつも結果に引っ張られる。
守備は失点を防ぐ動き方ではなく、相手の選択肢を狭める構造です。
相手には、どこからでも打てるわけではない。ディフェンスが正しく機能すると、相手は「打ちたい場所」ではなく「打たされる場所」からシュートを選ぶしかなくなります。
その「打たされるシュート」のことを、バッドショットと呼びます。
ディフェンスの目標は失点ゼロではなく、バッドショットを打たせることでした。
言い切りすぎかもしれません。でも県大会まで届かなかった私が原典を読み直して気づいたのは、失点数という結果の指標で選手を評価し続けたことが、チームのディフェンスを停滞させていた根本だったということです。
基準と計測と声かけ、この3つが同時に揃わないと、プロセス評価は根づきません。でも逆に言えば、この3つを揃えたとき、選手が自分で良い守備を判断して、結果に振り回されず守れるようになります。
ただし、カテゴリーや学年によって基準は変わります。一概には言えません。では、何を良い守備とするか。
簡単に言えることではないんです。それは、バッドショットを定義する3つの条件から始まります。
この記事を読み終えたら、明日の練習で何を良い守備として評価するか、迷わず決められるようになります。
バッドショット(bad shot)。相手が打たされた、難しいシュートのことです。
バッドショットの定義は明確です。「行かせたいところに行かせ、ハッスルアップした手の近くからの、あるいはそれ以上の距離のシュート」。
この定義を分解すると、バッドショットには3つの条件があります。
条件1:方向づけされている。
ボールマンに対するディレクション。ミドルへのドライブを阻止し、ベースラインまたはサイドラインに追いやる。相手が行きたい場所ではなく、ディフェンスが行かせたい場所からシュートを打っている。
条件2:コンテストされている。
「ハッスルアップした手の近く」。つまり、ディフェンダーの手がシューターの視野に入っている状態。ノーコンテストのオープンシュートではありません。ディフェンダーが手を上げて、シュートに対応している。
条件3:距離がある。
ゴール近辺のイージーショットではありません。ディフェンスの方向づけとプレッシャーにより、ゴールから遠い位置からのシュートを強いている。
この3条件が揃ったシュートは、たとえ入っても「良いディフェンスだった」と言える。バスケットボールには確率がある。どんなに良いディフェンスでも、相手のシュートが全部外れるわけではありません。大事なのは、相手に「良いシュート」を打たせたかどうかではなく、「悪いシュート」を打たせたかどうかです。
図1:バッドショットを定義する3つの条件
「バッドショットを打たせる」という言葉は、耳にしたことのあるコーチも多いと思います。
ここで重要な要素は「1回の攻撃で1回」という数字です。
これはどういう意味か?
1回のポゼッションで、相手に許すシュートはバッドショット1本だけ。セカンドチャンスは与えない。オフェンスリバウンドを取られて2回目のシュートを打たれたら、たとえそれがバッドショットでも、ディフェンスとしては失敗です。
「ディフェンスリバウンドを確実に取り、セカンドチャンスを与えない。相手に2回目以降の攻撃の機会を与えることは敗北を意味する」。
つまりディフェンスの目標は2つのステップで成り立つ。
ステップ1:バッドショットを打たせる。
ステップ2:そのバッドショットが外れたら、リバウンドを取って攻撃を終わらせる。
この2つが両方達成されて初めて「1回の攻撃で1回のバッドショット」が成立する。片方だけでは不十分です。
図2:DFポゼッション成功の2つのステップ
この目標の最も重要な価値は、プロセスで評価できることです。
失点数は結果です。相手のシュートが入ったかどうかは、ディフェンスだけではコントロールできない。でも「バッドショットを打たせたかどうか」は、ディフェンスのプロセスで評価できる。
試合後のビデオレビューで、1ポゼッションごとに確認する。
相手のシュートは方向づけされていたか? コンテストされていたか? ゴールから十分な距離があったか? リバウンドは取れたか?
4つの質問にYesなら、たとえシュートが入っていても「良いディフェンス」です。相手のシュートが入ったことを責める必要はない。逆に4つのうち1つでもNoがあれば、シュートが外れていても「改善が必要」です。
この評価方法は、選手のメンタルにも良い影響を与えます。「シュートが入った=自分のミス」という思い込みから解放される。正しいプロセスを踏んだなら、それは良いディフェンス。結果は確率の問題です。
コーチが「プロセスを見ている」と伝えることで、選手は結果に一喜一憂せず、プロセスに集中できるようになります。
「1回の攻撃で1回のバッドショット」。この目標の意味と、プロセス評価の考え方は掴めたと思います。
でも現場で使うには、もう少し具体的な道具が必要です。ビデオレビューの記録シート。練習中にバッドショット率を計測する方法。選手にこの目標を浸透させるコミュニケーション。
詳細記事では、「1回の攻撃で1回のバッドショット」を日常の練習と試合に組み込む具体的な方法を掘り下げていきます。
図3:ここから先の解説する5つのテーマ
ここから先は有料パートです
ここから先が有料パートです↓↓
~ この続きをみるには ~
