速攻
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コントロールド・ファスト・ブレーク:条件付き速攻の設計

Coach KAZU
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「走れ」という声かけで速攻を作ろうとしていた時期が、私にはずいぶん長くありました。選手は走っているのに、フロントコートで囲まれてターンオーバーが続く。あるとき気づいたのは、「走れ」が指示として成立していなかった、ということでした。

正直、最初はどこか引っかかっていました。走れと言えば走る、それで十分だと思っていました。でも練習ではできるのに試合でコントロールされた速攻が機能しない、あの感覚が続く限り、何かが根本的にずれているという確信だけが残っていたんです。

逆速攻。

ベンチに戻ってきた選手に「なんで走った?」と聞いても、「走れって言われたから」としか返ってこない。

次のポゼッション。今度はリバウンドを取っても誰も走らない。ゆっくりボールを運んで、セット・オフェンス。24秒ぎりぎりの苦しいシュート。

さっき怒られたから、今度は走らない。選手にとっては合理的な判断です。でもコーチから見れば、明らかにチャンスでした。

「走れ」と「走るな」の間で、選手が迷っている。

以前は速攻は速ければ速いほどいいと思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、速さより先に「走る条件」が存在しなければ、速攻は制御できないままになる、ということでした。

速攻が制御できないのは、練習量や根性や才能ではありません。走る・走らないの基準がチームに存在しないことが原因です。


はじめに

速攻が「雑」になるのはなぜか?


速攻が雑になるチームには、共通するパターンがあります。

最初は勢いがいい。リバウンドを取ったらとにかく走る。走って走って、アウトナンバーができれば得点になる。気持ちがいい。

でもそのうち、相手も戻りが速くなる。アウトナンバーにならない場面が増える。それでも走り続ける。5対5でディフェンスが揃っているのに、無理やりレイアップに行く。ターンオーバーが増える。

すると今度は「走るな」という指示が出る。選手は混乱する。

この「走れ → 失敗 → 走るな → チャンスを逃す → また走れ」のサイクルが、速攻を雑にしている正体です。

コントロールされた速攻は、形ではなく、構造と判断の問題です。

根っこにあるのは、速攻を「する/しない」の二択で捉えていること。走るか、走らないか。ON か OFF か。でも試合は、その間のグラデーションで動いています。

「走ったほうがいい場面」と「走らないほうがいい場面」は、条件によって変わる。その条件を言語化して、チームで共有すること。これが「コントロールされた速攻」の考え方です。


核心

速攻に対する3つの考え方


速攻に対するコーチの考え方は、歴史的に大きく3つに分かれてきました。

第1:セット重視型。速攻にはあまり頼らず、ハーフコートで勝負する。安定はするが、イージーショットのチャンスを見送る場面も多い。

第2:ランアンドシュート型。ボールを取ったら常に走る。「レースホース」とも呼ばれます。得点は増えるが、ターンオーバーも増える。スタミナの消耗も激しい。

第3:コントロールされた速攻。ある条件が揃った場面では速攻を展開し、揃わなければセット・オフェンスに移行する。状況を見て判断する方法です。


diagram


コーチ・ウッドンはこう言っています。「ファスト・ブレークの方に完全に依存することではありません。コーチが必ずファスト・ブレークが出来ないときに備えてパターンを準備しなければならない」。

速攻は万能ではありません。速攻で得る得点は全得点の20〜30%程度。残りの70〜80%はハーフコートで取らなければなりません。

だから「常に走る」も違うし、「速攻は使わない」も違う。条件が揃ったときだけ走る。揃わなければ無理をしない。この判断の精度が、チームの攻撃効率を決めます。

言い切りすぎかもしれません。でも、県大会未出場の私が現場で見続けてきた限り、速攻が制御できないチームに共通するのは、練習量でも根性でもなく、「判断の基準がない」という一点でした。


思い込みの点検

「走れ」は指示にならない


あなたのチームの選手に「速攻のチャンスはどういうとき?」と聞いたら、何と答えるでしょうか。

「リバウンドを取ったとき」「相手が戻っていないとき」「2対1のとき」。間違いではありません。でも曖昧です。

「相手が戻っていない」とは、何人戻っていなければ速攻のチャンスなのか。3人? 2人? 1人でも遅れていたら走るのか。

「走れ」という指示は、気合いの表現としてはわかる。でも判断基準としては機能しません。選手は毎回自分の感覚で判断することになる。感覚は人によって違う。走る選手と走らない選手が出る。連携が崩れる。

コントロールされた速攻の核は、この感覚を条件に置き換えることです。「こういう条件が揃ったら走る。揃わなければセットに入る」。これがチーム全員で共有されていれば、選手は迷わない。


核心

「走るかどうか」を決める3つの観点


では、条件とは具体的に何か。

速攻を展開するかどうかの判断には、3つの観点があります。

観点1:人数。攻撃側と守備側の人数差。2対1、3対2のアウトナンバーがあるか。これは最もわかりやすい条件です。アウトナンバーがあれば、原則として速攻を仕掛けます。

観点2:状態。人数が同じでも、守備側が「ルーズな状態」にあるかどうか。人数は5対5に見えても、守備が機能していない場面はたくさんあります。

観点3:位置。ボールの位置と味方の位置関係。アウトレットパスがスムーズに出せる状態か。

この3つは、どれか1つだけで判断するものではありません。3つを組み合わせて、その場面でGOかSTOPかを瞬時に判断する。

原則と読みとタイミングが同時に揃わないと判断は出ません。本や動画だけでは揃わない。選手が自分のチームの文脈でこの3つを使いこなせるようになるには、条件を固定した段階的な練習設計が必要です。


diagram


この3つの観点は、どれか1つだけで判断するものではありません。

アウトナンバーがある。でもボールが詰まっていてパスが出せない。→ 走らない。

人数は同じ。でも相手の3番が全力で走り戻る途中で、まだポジションについていない。レーンも空いている。→ 走る。

こういう組み合わせで判断する。どれか一つでも大きな優位があれば速攻を仕掛ける価値がある。逆に、どれも中途半端なら無理せずセットに入る。

コントロールド・ファスト・ブレークとは、この判断をチームの「共通言語」にすることです。


条件があれば、選手は迷わず走れます。条件がなければ、迷わず止まれる。この「迷わなさ」が、速攻の質を変えます。

この記事を読み終えたら、いつ仕掛けいつ抑えるかを自分で判断できるようになります。ただ、その判断をご自身のチームの選手に実戦で動かさせるには、簡単に言えることではない段階的な設計が必要です。


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ABOUT ME
Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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