個人ディフェンス
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五感に基づく判断:触覚が変えるDF

Coach KAZU
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はじめに

ボールから目を離したその瞬間、ポストでボールが入った


ローポストでうちのセンターが相手にポジションを取られていました。ボールはまだウイング。

「ボール見ろ」と声をかけた次の瞬間、背中側からぐっと押されて重心が崩れる。目線を戻したときにはもうボールは中に入っていて、ターンアラウンドでフリーのジャンパー。


…何度も、この光景を見てきました。


「ディフェンスは目で見て守れ」。私自身、長いことそう教えていました。ボールと自分とマークマンの三角形を意識しろ、視野を広く持て、ボールから目を離すな。

でも、目だけで守っているうちのセンターは、ある段階から伸びなくなっていたのです。


気持ちはわかります。「見る」以外の感覚があるなんて、考えたこともない。でも、優れたディフェンダーほど、実は目以外の感覚を使って守っているんです。

手のひらで重みを感じ、耳で味方の声を拾い、皮膚で接触の方向を読む。ディフェンスは見る動き方ではなく、五感で相手を感じる構造でもあったのです。


思い込みの点検

視覚だけに頼るDFには、構造的な限界がある


「ボールマンとマークマンの両方を視野に入れろ」。これが、ボールと自分とマークマンの三角形で守る、オフボールディフェンスの基本中の基本です。

以前は「とにかくよく見ろ」と言えば守れると思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、そうではないということでした。

でも、現実を考えてみてください。

人間の視野は、はっきり見える中心視野が狭い。周辺視野を含めても視覚でカバーできる領域には限りがある。コート上には自分以外に9人のプレーヤーとボールがある。全てを同時に見ることは、物理的に不可能です。


特にローポストのディフェンス。相手に背中を向けてフロントで守っている場面。ボールは見えている。でもマークマンの動きは見えない。背中で感じるしかない

あるいはスクリーンの場面。スクリーナーが近づいてくる。視野の外から来る。チームメイトの声で気づくこともあるが、最も速い情報は、体に触れた瞬間の触覚です。


視覚がカバーしきれない領域を、触覚が補っている。これは感覚の連携です。

練習ではできるのに試合で見失う、あれです。選手を責めたくなる瞬間ですが、そこで立ち止まった方がいい。

見失うのは、選手の才能や根性の問題ではありません。視覚だけで守ろうとしていた問題でした。


だってヘルプが遅れていた。マークを感じる判断を起点に、反応、そして守りへつながる連鎖が抜けていたんです。教えていたのは「よく見ろ」という声かけ。視覚以外で相手を感じるという”判断”を教えていなかった。

…それはそうなんですが、私も長いこと「目で見て守れ」としか言えませんでした。触覚を鍛えるなんて、そもそも意識にすら上らなかった。


(ちょっと雑談)

ある日、練習後に「センターが見ていないときのポジショニング」を個別で教えていたときのこと。私が「背中で押し返せ」と言ったら、選手が「えっ、どうやって?」と本気で聞き返してきました。

そこで気づいたんです。私は「体で感じる」という当たり前のことを、一度も言語化して教えていなかった。目で見る以外の感覚が存在することを、そもそも意識させていなかった。これが、伸び悩みの正体でした。

選手を責める前に、自分が「感じる守り方」を一度も教えていなかったことに気づいた瞬間でした。


核心

触覚がディフェンスを変える3つの場面


触覚がディフェンスの質を決定的に変える場面は、主に3つあります。

【触覚が支配する3場面】

場面1:ローポストのフロントガード

「ローポストマンにはフロントで守り、ウイングからのパスはもちろん、簡単なハイローのパスも通させないようにする。ローポストでは相手に体を押し当てディナイし、ポストエリアから外に押し出すようにする」。この「体を押し当てる」が触覚です。

場面2:ボールマンDFのボディアップ

「チェスト・トゥ・チェスト(chest-to-chest)の距離、少なくとも1m以内の距離でボールマンに接近しプレッシャーをかける」。この距離では、相手の動き出しを目で追うだけでは遅い。接触している手や体で、重心移動を先に感じ取れる。

場面3:スクリーンへの対応

スクリーナーが接近してくる。最も信頼できる情報は、スクリーナーの体が自分の体に触れた瞬間。その瞬間にファイトオーバーかスライドスルーかの判断が始まる。


3つの場面に共通するのは、触覚が視覚より速い情報を提供するということ。ディフェンスが構造的に後手である以上、この情報差は巨大です。


五感の担当領域 DF 統合 視覚 大局を把握・スペーシング 触覚 近距離の体重移動・接触 聴覚 視野外の声・情報 固有受容覚 自分の位置・重心の制御 4つが連携し、視覚だけでは届かない領域をカバーする

図:五感それぞれの担当領域


優れたディフェンダーは、5感を統合して使っています。視覚で大局を把握し、触覚で近距離を感じ、聴覚で死角をカバーし、固有受容覚で自分の位置を制御する。

この統合が崩れると、ディフェンスが崩れる。視覚だけに頼ると近距離で遅れる。触覚だけに頼ると大局を見失う。聴覚を無視するとチームの連携が途切れる。


ここまで読んで、ディフェンスが「目で見るもの」だけではなく「感じるもの」でもある、という視界は開けてきたと思います。

では、五感のどれから鍛えるか。簡単に言えることではないんです。それは、選手によっても場面によっても変わってくる。

視覚と触覚と聴覚、この3つが同時に揃わないと、ボールも人も守れない。どれか1つだけでは機能しない。この3つを「一緒に鍛える」仕組みが要る。

言い切りすぎかもしれません。でも県大会まで届かなかった私が原典を読み直して気づいたのは、五感が個別に機能しても、統合されていなければ意味がない、ということでした。

触覚は必ず守備を変えます。ただし、もちろん全員が同じ速さで身につくとは限りません。どの感覚から入るかで選手の伸び方は変わる。

この記事を読み終えたら、明日の練習で五感のどれから鍛えるか、迷わず選べるようになります。

選手が自分でマークの位置を判断して、ボールから目を離さず守れるようになる。その入口を、ここから先で順に組み立てていきます。


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ABOUT ME
Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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