-守れるチームの目線ルール-
チームDFが崩壊するときは、足が遅いとか反応が鈍い以前に、「目線が定まっていない」ことが多い。
— KAZU|バスケの戦術を考える人 (@bsk_pharmacist) January 13, 2026
視野が狭いとか、センスがないとかではない。
「ボール→マイマン」or「マイマン→ボール」の使い分けができていないだけ。
特にトランジションやボールムーブが発生すると処理する情報量が増える。…
ある日の練習試合。相手チームがトランジションで攻めてくる。うちの選手はちゃんと戻っている。人数も揃っている。なのに、あっさりゴール下でシュートを決められる。
「マーク!マーク!」とベンチから声を出しても、選手は何か迷っている様子。マイマンを見失っているのか、それともボールを追いすぎているのか。結局、ノーマークのイージーシュートを許してしまう。
試合後の振り返り。トランジションとパス回しからの失点が異常に多い。選手を集めて聞いてみる。
「いま、何を見てた?」。
選手は黙ったまま。
自分でもよく分かっていないんです。
こういう経験、指導者なら一度はあるんじゃないでしょうか。
で、こういう時に陥りがちな結論があります。
「フットワークが悪いんだろう」
「反応が遅いんだろう」
「そもそもセンスがないんじゃないか」。
私も正直、昔はそう思っていた時期がありました。
だからフットワークの練習を増やしたし、反応を鍛えるドリルも取り入れた。
でも、試合になると同じ光景が繰り返される。
マイマンを見失う。
ヘルプが遅れる。
バックカットを許す。
何かが根本的にズレている。でも、それが何なのか分からない。そんな状態がずっと続いていました。
フットワークが大事。これは間違いないです。
ディフェンスはまず足が動かなければ話にならない。だから多くのチームがフットワークを重視して、サイドステップ、クロスステップ、クローズアウト、繰り返し練習する。
でも、ちょっと考えてみてください。
フットワーク練習では動けるのに、試合になると動けない選手、いませんか? ドリルでは綺麗にステップを踏めるのに、実戦になると足が止まる。
あるいは、動いてはいるけど的外れな方向に動いている。
これ、フットワークの問題じゃないんです。
フットワークは「結果」であって、「原因」ではない。足が動かないのは、足が鈍いからではなくて、動くべき方向が分からないからです。判断できていないから、足が出ない。
じゃあ、「センス」はどうか。
センスという言葉は便利です。説明がつかないことを全部そこに押し込める。「あの選手はセンスがある」「うちの選手にはセンスがない」。
でも、センスで片づけた瞬間、指導者としての思考は止まります。センスは生まれつきのものだから、「指導では変えられない」、そう結論づけてしまうと、もう打ち手がなくなる。
本当にセンスの問題でしょうか?
私は違うと思っています。
センスがあるように見える選手と、そうでない選手の差は、実はすごくシンプルなところにある。
それは「何を見ているか」です。
(ちょっと雑談)
私は長い間「視野を広く持て」と選手に言い続けていました。練習でも試合でも。「周りを見ろ」「視野を確保しろ」。
でも、選手のディフェンスが変わらないんです。言われた直後は意識するけど、すぐ元に戻る。「視野を広く」って、実は曖昧すぎて、選手からすると何をすればいいのか分からないんですよね。
バスケットボールは、ボールと人が高速で動くスポーツです。
トランジションの時なんか特にそう。攻守が切り替わった瞬間、5人のオフェンスと5人のディフェンスが一斉に動く。ボールも飛ぶ。この状況で、人間の目と脳は大量の情報を処理しなければならない。
で、ここからが重要なんですが、
ここから先が有料パートです↓↓
人間は一度に見られるものは限られているんです。
視野は確かにある程度の広さがありますが、「しっかり認識して判断できる」範囲は意外と狭い。だから、何かを見ている間は、別の何かが見えていない。
つまり、ディフェンスが正しくできるかどうかは、「何を」「どの順番で」見るかで決まります。
視野を広く持つ、という曖昧な話ではない。もっと具体的に、目線をどこに向けるか、その順番をどうするか。これが定まっていないと、いくらフットワークを鍛えても、判断の材料がないから足が動かない。
ここで、目線の順番の原則をお伝えします。
【目線の順番の原則】
原則:ボール → マイマン
ほとんどの場面で、まずボールを見て、それからマイマンを見る。
例外:マイマン → ボール
ボールが空中にあるとき(マイマンサイドにボールが飛んで来るときなど)は、先にマイマンを見てからボールを見る。
たった2パターンです。
「ボール → マイマン」か、「マイマン → ボール」か。シチュエーションによって使い分ける。これだけ。
でも、この原則を明確に教えられていない選手は、場面ごとに迷う。迷っている間にボールは動くし、マイマンも動く。
結果、「なんとなく」見ているうちに、対応が遅れる。
逆に言えば、この原則さえ身についていれば、「何を見るべきか」で迷わない。迷わないから、判断が速くなる。判断が速いから、足が動く。
これが「センスがある」ように見える選手の正体なんです。
原則を理解したところで、実際の場面で見ていきましょう。
トランジションの場面
自分たちのオフェンスが終わり、ディフェンスに切り替わる瞬間。相手がボールを取って、速攻で攻めてくる。
ここでやりがちな間違いがあります。
【よくある失敗パターン】
マイマンを追いかけながら戻る
→ ボールの位置を確認する
→ 気づいた時には、ボールマンや相手の選手がゴール下でフリー
これ、目線の順番が逆なんです。
マイマンから見て、それからボールを確認している。だから、ボールがどこまで進んでいるか把握できないまま走っている。
【正しいパターン】
まずボールを見る(どこにあるか、誰が持っているか)
→ すぐにマイマンを確認する(どこにいるか)
→ 視野にボールとマイマンを両方入れながら戻る
トランジションでは、まずボールを見る。
ボールがどこにあるかで、自分がどこにどれだけ急いで戻らなければならないかが決まる。ボールを把握してからマイマンを確認すれば、「マイマンを守りつつ、ボールの進行も見えている」状態になる。
この差は大きいです。
ボールを見ずにマイマンだけ追いかけていると、視界の外でボールがゴール下まで進んでいても気づけない。
(トランジションDFは目線の他にも必要な技術がありますが、今回は割愛します)
パス交換の場面(ボールが自分のマイマンから離れていく時)
ハーフコートオフェンス。
自分のマイマンがボールを持っていて、味方にパスを出した。
この瞬間も、原則は「ボール → マイマン」です。
パスが出た瞬間、まずボールを目で追う。どこに飛んだか、誰がキャッチしたか。それを確認したら、すぐにマイマンを見る。そして、視野にボールとマイマンを両方入れた状態をキープする。
なぜこの順番が大事か?
もしマイマンをずっと見続けていたら、ボールの位置が分からなくなります。ボールがどこにあるか分からないと、ヘルプのタイミングも分からない。
例えば、ボール保持者がドライブを仕掛けてきた時、ヘルプに行くべきか、マイマンに張り付くべきか、判断できない。
逆に、ボールだけ見っぱなしで、マイマンを視界から外してしまうと、バックカットを許します。ボールを見ている間にマイマンがゴール下に走り込んで、パスを通されてイージーシュート。
これもよくある失点パターンです。
だから、ボールを見て、マイマンを見て、その後は視野に両方を入れ続ける。これがセットになっています。
例外:自分のマイマンサイドにボールが飛んで来るとき
ここまでの原則と逆になるケースがあります。
それは、自分のマイマンにパスが飛んでくるときです。
このケースだけは「マイマン → ボール」の順番になります。
なぜか?
ボールをずっと追いかけて、最後の最後にマイマンを見ると、距離感を誤るんです。
マイマンとの間合いが分からないまま、ボールがキャッチされる。その瞬間、相手はすでにドライブの準備ができている。こちらはまだ間合いを測っている。コンマ数秒の遅れで、カウンタードライブをやられる。
【自分のマイマン側にボールが来るとき】
まずマイマンを見る(位置と姿勢を確認)
→ マイマンとの間合いを調整しながら、ボールを迎える
→ ボールがキャッチされた瞬間、すでに守りの体勢ができている
自分のマイマンにボールが渡るときは、先にマイマンを捉えておく。ボールは視野の端で感じる程度でいい。
マイマンとの距離感が正しく取れていれば、ボールが渡った瞬間にすでにディフェンスの準備ができている状態になります。
(ちょっと雑談)
この使い分け、最初は選手も混乱します。「ボール → マイマン」が原則なのに、時々「マイマン → ボール」になる。どっちだっけ? となる。
でも、考え方はシンプルなんです。
「ボールが自分のマイマン側に向かってくるか、離れていく(る)か」。これだけ。向かってくるならマイマン先、離れていくならボール先。これを体で覚えるまで、ドリルで繰り返す必要があります。
原則を理解しても、それだけでは試合で使えません。考えなくても体が動くレベルまで落とし込む必要があります。そのためのドリルを紹介します。
2v2 クローズアウト&Jump to the Ball(ダッシュ&バック)ドリル
【セットアップ】
- スロットの幅(3ポイントラインの両端付近)にオフェンス2人を配置
- それに対応するディフェンス2人
- オフェンスはその場でパス交換を繰り返す(ドライブなし)
【ディフェンスの動き】
ボールを持っている側のディフェンス → クローズアウト(マイマンにプレッシャー)
ボールを持っていない側のディフェンス → Jump to the Ball(ボール方向に一歩寄る)
パスが出るたびに、役割が入れ替わる。クローズアウトしていた選手はJump to the Ballへ、Jump to the Ballしていた選手はクローズアウトへ。
このドリルでの目線の使い方
ここが核心です。このドリルで、目線の順番を意識させます。
【ボールが自分のマイマンから離れていくとき】
= Jump to the Ballする側
目線の順番:ボール → マイマン
- パスが出た瞬間、まずボールを目で追いながらJump to the Ball
- ボールの行き先を確認しつつ、すぐマイマンを見る
- 視野にボールとマイマンを入れる
【ボールが自分のマイマンに向かってくる時】
= クローズアウトする側
目線の順番:マイマン → ボール
- パスが出る前から、マイマンを捉えておく
- マイマンとの距離感を測りながらクローズアウトし、ボールが来るのを待つ
- ボールがキャッチされた瞬間、DFの体勢ができている
スロットの幅は狭いので、パス交換のテンポが速くなります。目線を切り替える練習と、ステップワークの練習を同時にできる。一石二鳥です。
慣れてきたら距離を広げて行ってください。
コーチングのポイント
このドリルでコーチが見るべきは、まずは目線です。
パスが出た瞬間、選手の目がどこを向いているか?ボールが離れていく側の選手は、ちゃんとボールを先に見ているか?ボールが来る側の選手は、先にマイマンを捉えているか?
目線の順番が正しければ、足は自然についてきます。目線が間違っていれば、いくら足が速くても対応が遅れる。
最初はゆっくりやってください。パス交換のテンポを落として、目線の切り替えを意識させる。慣れてきたらテンポを上げる。最終的には、考えなくても正しい順番で見られるようになるまで繰り返す。
(ちょっと雑談)
このドリル、実は私自身がずっと悩んでいた「なぜ選手は簡単にマイマンを見失うのか」の答えでした。目線の順番を意識させるようになってから、明らかに失点パターンが減った。特にトランジションでの失点が激減しました。
もちろん、これだけで全部解決するわけではないですが、「見方」が変われば「守り方」が変わる。これは確かです。
ディフェンスが崩壊する原因は、フットワークでもセンスでもない。目線の順番が定まっていないから、判断ができず、結果として足が動かない。これが根本にあります。
「視野を広く持て」と言っても、選手には何をすればいいか分からない。それよりも、もっと具体的に、「何を」「どの順番で」見るかを教える。
【覚えておくべき原則】
原則:ボール → マイマン
例外:マイマン → ボール(自分のマイマン側にボールが来るとき)
そして、目線を切り替えた後は、視野に両方を入れ続ける。
この原則を身体に刻むには、繰り返しが必要です。2対2のクローズアウト&Jump to the Ballドリルを使って、目線の順番を意識させながらステップワークも鍛える。
選手が「何を見るべきか」で迷わなくなれば、判断が速くなる。判断が速ければ、足が動く。足が動けば、守れる。
これが「正しい頑張り方」です。
フットワークを鍛えることは大事です。
でも、その前に「何を見るか」が定まっていなければ、いくらフットワークを鍛えても的外れな動きになる。目線の順番を整えることで、フットワーク練習の効果も上がります。
次の練習から試してみてください。
選手に「まずボールを見ろ、それからマイマン」と声をかけるだけでも、変化が見えるはずです。
次の練習で試せること
【15分でやってみよう】
- 練習前に選手を集めて、「ボール → マイマン」の原則を説明する(3分)
- 2対2クローズアウト&Jump to the Ballドリルをセットする(2分)
- ゆっくりしたテンポで、目線の切り替えを意識させながら実施(5分)
- テンポを上げて繰り返す(5分)
指導者が見るポイント:目線が正しいタイミングで正しい方向に向いているか?
目線の使い方が定着すれば、「なんでこんな簡単に点を取られるんだ?」という場面は確実に減ります。
正しく見れるから、正しく守れる。
ここからです。