タグとゴールテンダー:ロール対応の2つの役割

Coach KAZU
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はじめに

タグとゴールテンダー ロール対応の 2つの役割


ピック&ロールでスクリーナーがロールしたあと、ゴール下でフリーになる現象を、私は長く見過ごしていました。ボールマンDFがファイトオーバーまで頑張っていれば、それ以上は仕方ないと思い込んでいたのです。実際には「タグ」と呼ばれる役割があって、ヘルプサイドからもう一人がロールマンに当たる設計をしていなかっただけでした。

ピック&ロールDFは2人ではなく、3人で守るものでした。

ベンチに戻った選手が言う。「誰が見るんですか、あれ」


練習ではできるのに試合でローラーやカッターを止められない、あれです。何度練習してもハーフタイムで指示しても3秒で崩れる。ご自身のチームでも崩れていませんか。そのとき、選手のせいにしてしまうのは少しつらい。でも何が足りないかが見えなくて、また同じように「ヘルプしろ!」と叫んでしまう。

正直、最初はどこか引っかかっていました。「ヘルプに行けば誰かが空く、ヘルプに行かなければロールマンにやられる」という矛盾した状況が、指導の言葉を曖昧にする。「まあ、なんとなくヘルプしろ」という指示が続くと、選手も何をすべきか分からなくなる。

以前はゴール下は身長と反応速度で守るものだと思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、ゴール下を割られるのは身長でも反応速度でもなく、「誰が何をするか」という役割分担の設計が欠けているからでした。

教えていたのはヘルプの「形」や「手順」だった、ということに気がつきました。いつ誰がタグするか、誰がゴールテンダーとして最後の砦に立つか。その判断・読み・優先順位を教えていなかったのです。

ゴール下を割られるのは、練習量や根性や体格ではありません。ロールマンへの対応は「なんとなくヘルプ」ではなく、タグとゴールテンダーという2つの役割に分けて名前をつけることで、初めて選手が動けるようになります。

選手が自分で判断してタグに動き、コート上の5人が同じ絵を見て揃う。後半が安定する。ベンチの声が通る。そういう状態は、筋力や身長ではなく、役割の言語化と判断の設計から生まれます。

ただ、これは一人では揃えにくい。タグの原則と読みとタイミング、そしてゴールテンダーとしての判断基準が同時に揃わないと機能しません。本や動画でそれぞれを別々に学んでも、試合でバラバラになります。5人が同じ構造を持って初めて動く。これが、孤独に感じる理由だと思っています。

言い切りすぎかもしれません。でもコーチ歴5年、県大会まで届かなかった私が現場で見てきた限り、役割を分けて名前をつけただけで選手の動きが変わった場面を何度も目にしてきました。

ロールマンを止める仕事には、2つの役割があります。タグゴールテンダー。この2つの違いと使い分けが分かると、PnR対応の解像度が一段上がります。


ただ、名前を知っているだけでは試合では動けない。タグに行くべきタイミングはいつか。誰が行くのか。行ったあとにキックアウトが来たら誰がカバーするのか。この「次の一手」の連鎖が設計されていないと、役割は名前のままで終わります。ご自身のチームで、そこまで言語化できているコーチは、実は多くない。それが正直なところだと思っています。



はじめに

タグ ロールマンの進路を「塞ぐ」仕事



タグとは何か


タグ(tag)は、PnRでスクリーナーがロールした瞬間に、ヘルプサイドのDFがロールマンの進路に体を入れる動きのこと。「タグダイブ」とも呼ばれる。

目的はシンプル。ロールマンへのパスを1秒でも遅らせること。あるいは、パス自体を出させないこと。

トラップDFの隊形でいえば、インターセプターの仕事に近い。インターセプターは「常にボールとプレーヤーを予測しなければならない」存在であり、パスコースの先読みが求められる。タグも同じ。ロールが始まる前から、自分が飛び出す角度を準備している。

≫ 関連:PnRディフェンスの全体設計


誰がタグに行くのか


原則は、ヘルプサイドでゴールに最も近い位置にいるDF。多くの場合、ヘルプサイドのビッグマンのDFがその役割を担う。

なぜか。ロールマンがダイブする先はリム周辺。そこに最も早く到達できるのは、すでにペイント付近にいるDFだからです。

(ちょっと雑談)

タグの判断基準はひとつ。「自分のマークマンを一瞬離してでも、ロールマンを止めるべきか」。答えはほぼ常にイエス。リム下のイージーシュートは、キックアウトの3ポイントより期待値が高い。


diagram

図1:PnRに対するタグの動き。X4がヘルプサイドからロールマン⑤の進路を塞ぐ


タグの3つの原則


ここで大事なのは「原則」として言語化されているかどうかです。「なんとなく体が動く」ではなく、「この条件のときにこう動く」と言葉にできてこそ、ご自身のチームで明日から教えられます。


1. 早く出る、深く出すぎない

ロールが始まった瞬間に動き出す。ただし、完全にロールマンに密着してしまうと、自分のマークマンへのキックアウトパスに戻れなくなる。「進路に体を見せる」距離感が大事になる。

2. 胸をボールに向ける

タグに出る際、ロールマンだけを見てはいけない。胸をボール方向に開いておく。そうすることで、ハンドラーからロールマンへのパスと、キックアウトパスの両方を視野に入れられる。

3. 触らせない、または難しいキャッチにする

パスが出された場合、完全にカットできなくてもいい。ロールマンが片手でしかキャッチできない角度に追い込む。それだけで、イージーダンクがタフショットに変わる。


diagram

図2:タグの有無による結果の違い。タグがあればイージーバスケットを防げる

タグの最大のリスク
タグに出た瞬間、自分のマークマンがフリーになる。ハンドラーがロールマンではなくコーナーにキックアウトした場合、X4は戻りきれない。だからタグは「出っぱなし」ではなく、「見せて戻る」が基本。完全に離れるのはロールマンがボールを受けそうな場合だけ。

タグの原則は3つ見えました。でも、この3原則を「知っている」ことと、試合中にご自身のチームの選手が「実行できる」ことの間には、大きな溝があります。その溝を埋めるのが、判断のトリガーと練習の設計です。


≫ 関連:ヘルプポジションの設計

タグとゴールテンダーの「概念」はここまでで見えました。でも、ご自身のチームでいつ誰がタグに動き、誰がゴールテンダーとして残るか。その判断基準をどう設計して、どう練習に落とし込むかは、まだ手順として腹に落ちていない部分が残っていると思います。役割に名前をつけるだけでは、試合では動けない。判断のトリガー設計と段階的な練習の型が揃って初めて機能します。簡単に言えることではないんですが、ここから先がそれです。

この教材を読めば、明日の練習でゴールテンダーに何を声で指示すればよいか、タグのトリガーをどの言葉でチームに伝えるか、その1点が選べるようになります。全部を一度に教えなくてよい。まず1つだけ、ご自身のチームに合わせて使ってもらえれば、それで十分だと思っています。


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バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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