アウトレットパスの3種と使い分け
練習ではできるのに試合で速攻の1本目が出ない、あれです。
リバウンドは取れている。でもそこから先、ボールが前に飛ばない。ハーフタイムで指示しても3秒で崩れる。0.5秒の迷いが積み重なって、気づいたら相手DF陣が全員戻っています。
速攻が遅いのは、練習量や根性や才能ではありません。リバウンダーが「誰に・どこへ・いつ出すか」の判断構造を持っていないことが、本当の原因です。
正直、最初はどこか引っかかっていました。選手の足が遅いからだ、リバウンド力が足りないからだ、と長い間思っていたんです。
以前は速攻はリバウンドの速さだと思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、速攻が出ないチームの問題は「走る前」にあるということでした。リバウンドを取った瞬間の1秒、そこの判断が固まっていないと、どれだけ速い選手を並べても速攻にはなりません。
教えていたのはアウトレットの「形」「手順」だったんです。いつ誰にどこへ出すかの判断・読み・優先順位を教えていなかった。だから速攻が出ないし崩れるのか。判断の連鎖の起点がなかったから、そこから先の動作も繰り返し止まる。たとえば機械のベルトコンベアの最初の歯車が抜けているようなものです。そう気づいたのがコーチ5年目のことでした。
速攻の指導で「走れ」から始めるコーチは多いと思います。走力がある選手を並べて、ボールを取ったら全力で走らせる。
でも、どれだけ速く走っても、ボールが前に出なければ速攻にはなりません。
ボールを速く前へ進める。これが速攻の第一原則です。人の走る速さより、パスの方がはるかに速い。当たり前のことだけど、ここが抜けているチームは驚くほど多い。
リバウンドを取った瞬間に、正確なアウトレットパスを出す。これが速攻の起点になります。
逆に言うと、アウトレットパスが出なければ、どれだけ脚力があっても速攻にはなりません。ドリブルで速攻をスタートするのは2秒より遅くなると成功率が落ちます。リバウンダーがドリブルで外に出る間に2〜3秒かかる。その2〜3秒で、相手は全員戻ってしまうんです。
速攻の強いチームは、リバウンドを取った瞬間にパスが出ます。まるでチームで同じ信号機を見ているかのように動きが揃う。弱いチームは、リバウンドを取った後にドリブルが始まる。この差は脚力の差ではありません。リバウンダーが速攻を始動する最初のアウトレットパスの出し方の差です。
アウトレットパスとして使われるパスは、主に3種類あります。
1. オーバーヘッドパス(両手の頭上パス)。
リバウンドを取ってそのまま頭の上からパスを出す。一番オーソドックスなアウトレットパス。リバウンドの動作から最も自然につながる。
ボールを下ろさない。取ったらそのまま頭上でキープして、すぐに出す。ボールを下ろすと相手にカットされるリスクが上がる。ゴール下は人が密集している。ボールを低い位置に持ってくるだけで危ない。
距離は中距離まで。サイドラインのアウトレットエリアにいる味方へ出すのに適している。
2. ベースボールパス(片手の遠投パス)。
野球の送球のように片手で投げるロングパス。距離が出る。フロントコートを走っている味方に直接届けられる。
このパスが通れば、一気にアウトナンバーが作れる。ワンマンブレーク(1人が先行して走る速攻)の起点になる。このロングパスは「ロングキャッチャーズパス」とも呼ばれ、「すべてのプレーはフルスピードで走りながら捕球されなければならない」。
ただし、リスクも高い。距離が長い分、インターセプトされる危険がある。精度が低ければターンオーバーになる。使える場面は限られる。
3. フックパス。
身体の横から弧を描くように出すパス。ディフェンスが前にいて正面からパスを出せないときに使う。リバウンドを取った直後、相手が前方にプレッシャーをかけてきた場面で有効。
片手でボールをコントロールする技術が必要。練習量がいるパスだけど、これができるリバウンダーがいると、相手のプレスに対して速攻を出せるようになる。
図1:アウトレットパスの3種類。場面に応じて使い分ける
多くのコーチはオーバーヘッドパスだけを教えています。それでも速攻は出せる。でも、相手がプレスをかけてきたとき、あるいはロングの速攻を狙いたいとき、1種類では足りない。
3種類を場面に応じて使い分けられるリバウンダーがいるチームは、速攻のバリエーションが格段に広がります。
パスの種類は分かった。では、リバウンドを取った瞬間に、選手は何をすればいいか?
答えは3つのステップ。
ステップ1:ボールを高く保つ。
リバウンドを取ったら、ボールを下ろさない。頭上、もしくは顎の高さでキープする。ゴール下は混戦地帯。ボールを腰まで下ろしたら、叩かれる。
ステップ2:外を見る。
ボールを高く保ったまま、アウトレットエリアに味方がいるかを確認する。視線は前方とサイドライン方向。足元やゴール下を見ていてはパスコースは見えない。
もっと先、フロントコートに走り出している味方がいるか。いれば、ベースボールパスのチャンス。
ステップ3:出す。
見えたら、出す。ためらわない。0.5秒の迷いが、速攻のチャンスを消す。
見えなければ、ドリブルで外に出る。無理なパスはしない。ターンオーバーよりはドリブルの方がまし。
図2:リバウンド直後の3ステップ。高く保つ→外を見る→出す
この3ステップは「技術」というより「習慣」です。練習で繰り返して、リバウンドを取った瞬間に自動的にこの動きが出るようにする。考えてやるものではありません。
アウトレットパスの出し先は、基本的にアウトレットエリアと呼ばれる場所です。
リバウンダーのサイドライン寄り、フリースローラインの延長線あたり。ゴール下から少し離れた位置。
なぜこの位置か?
ゴール下は密集地帯。パスコースが詰まっている。でもサイドライン方向に少し離れれば、スペースが開く。そこにガードやウイングが走り込んでパスを受ける。
ここで大事なのは、アウトレットエリアに「誰かがいる」こと。リバウンダーがボールを取った瞬間に、味方がそこにいなければパスは出せない。
つまり、速攻の設計はリバウンダーだけの問題じゃない。アウトレットマン(パスの受け手)が、リバウンドの瞬間にアウトレットエリアへ動いていること。これがセットになって初めて速攻が始まる。
図3:アウトレットエリアはFTライン延長線のサイドライン寄り
まあ要は、リバウンドと同時にアウトレットエリアへ動くことが「速攻のスタートボタン」です。たとえるなら、ゴールになったときに点灯する信号機のようなもの。その瞬間に全員が動き出す。リバウンダーが取ってから味方を探すのでは遅い。取った瞬間に、もうパスの受け手がそこにいる。速攻のスタートのタイミングを失わずに第1のパスをする。この同時性が全て。
速攻の起点は形ではなく、構造と判断の問題です。選手が自分で判断して速攻の起点を作り、コート上の5人が同じ絵を見る状態になると、ベンチからの声が通るようになります。後半も走り切れる。でも、その状態を作るには原則と読みとタイミングが同時に揃わないといけない。
言い切りすぎかもしれません。でも、県大会まで届かなかった私がコーチ歴5年で見てきた限り、速攻が遅いチームは必ず「形を教えて判断を教えていない」状態でした。速攻が遅い原因は必ずここにあると断言しますが、ただしチーム差・個人差はあります。簡単に言えることではないのですが、この記事を読み終えたら、誰にどこへ出すかをご自身のチームで自分で判断できるようになります。
図4:有料パートのロードマップ
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