速攻
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4エリア概念:コートを分けて判断する

Coach KAZU
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はじめに

「もっと速く判断しろ」が、なぜ届かなかったか


火曜の練習。5対0のブレーク。

リバウンダーがボールを取る。前を見る。味方2人が走っている。ディフェンスも同じ本数だけ走っている。


どこに出す? ドリブルで運ぶ? ロングパス? サイドに振る?

考えている間に、DFが追いついた。もう守りが揃っている。


「もっと速く判断しろ!」


…この言葉、1シーズン何百回叫んだか分かりません。でも、選手の判断は速くなりませんでした。


帰り道、運転席でハンドルを握りながら気づきました。「速く判断しろ」と言われても、選手の頭の中には白紙のコートしかない。何を基準に考えればいいのか、こちらが渡せていない。判断は抽象で教えると入らず、座標で教えると入るのではないか、と。

正直、最初はどこか引っかかっていました。「コートを4つに分ける」なんて、そんなことで本当に変わるのかと。以前は速く走れば誰がどこでもいいと思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、選手は地図がないまま走っていた、ということです。速さの問題ではなく、そもそも向かう先が定まっていなかった。


判断は感覚ではなく、地図の話だったのです。


思い込みの点検

速攻は「走力」ではなく「地図」で決まる


速攻の指導で、コーチが無意識に前提にしている言葉があります。


「速攻は走力と判断力の勝負」。


半分当たっています。でも半分、外しています。


速攻でレーンが重なり詰まる原因は、選手の走力や根性や才能ではありません。

選手が速攻の場面で迷うのは、判断力が低いからではありません。

選択肢が多すぎて、何を先に考えるべきか整理されていないから、です。


パスを出す相手は誰か。ドリブルかパスか。シュートはいつ打つか。

全てを同時に考えようとすると、頭がフリーズする。


まあ、それはそうですよね…。大人のコーチでも「右か左か上か下か」の4択を瞬時に判断しろと言われたら、3秒くらい固まると思います。


判断を速くするのは、走力ではなく「考える順序」。

今いる場所で、考えるべきことは1つに絞る。これを可能にするのが、コートを4つに分ける「4エリア概念」です。


(ちょっと雑談)

サイド・レーン・コントロールド・ファスト・ブレーク、という長い名前の速攻法が、コーチング理論の中にあります。直訳すると「サイドレーンを使った、制御された速攻」。その核が、実はこの4エリアの発想です。


核心

コートを4つに分ける:速攻の地図


フルコートを、バックラインから相手ゴールまで、4つの区画に分けます。


図1:フルコートを4エリアに分けた速攻の地図
図1:フルコートを4エリアに分けた速攻の地図


エリアI:イニシエーション・エリア(速攻の始動)

自陣ゴール付近。リバウンドを取る場所。ここでの課題は、ボールの引き離しとアウトレット・パスへのアプローチ。相手のプレスをかいくぐり、アウトレットパスを出す「始動」の場所。


エリアII:スピード・エリア(ボールを前へ)

自陣フリースローラインからハーフラインあたり。ここでの課題は、ボールを速く前へ転換すること。パスかドリブルか。最短距離を最速で。リバウンダーのアウトレット・パスの出し方が、ここでの成否を決める。


エリアIII:トランジション・エリア(判断)

ハーフラインから相手フリースローラインあたり。ここが速攻の分岐点。アウトナンバーが成立しているか。このまま速攻を続けるか、セットオフェンスに切り替えるか。


エリアIV:スコアリング・エリア(仕留め)

相手ゴール付近。バスケットから15フィート内外のところ。ここまでボールが来たら、あとはフィニッシュ。高確率シュートの位置から「イージーショット」のチャンスを作り出す場所。


この4つの区画は、ただの場所の分類ではありません。

各エリアで「何を考えるべきか」が変わる。だからエリアを分ける。場所が変われば、課題が変わる。課題が変われば、最適な行動も変わる。


具体場面

なぜ「エリアで分ける」と判断が速くなるのか


速攻の場面で選手が迷うのは、選択肢が多すぎるからだ、と先に書きました。

4エリア概念は、この情報量を絞る道具です。エリアごとに「今考えること」が1つに決まる。だから判断が速くなる。


エリアIなら「引き離し」。エリアIIなら「前へ運ぶ」。エリアIIIなら「アウトナンバーはあるか」。エリアIVなら「フィニッシュ」。全部を同時に考えるのではなく、今いる場所で一つだけ考える。


具体場面

エリアI・IIを通過する:最初の2区間


リバウンドを取った瞬間がエリアI。この場面で考えることは一つ、「ボールを相手から引き離す」。前を見るのはその後でいい。


ドリブルで速攻をスタートするのは2秒より遅くなると成功的な速攻にならない。エリアIではパスで引き離すのが原則です。ドリブルはパスより遅い。


エリアIIに入ったら課題が変わる。「ボールを速く前に運ぶ」。パスが使えるならパスを優先。エリアIIは通過するエリアです。留まると相手DFが戻ってきます。


具体場面

エリアIII:続けるか、切り替えるか


ハーフラインを越えた。ここからがエリアIII。トランジション・エリア。

速攻の成否が決まる場所です。


このエリアに入ったとき、ボールマンが確認すべきことは一つ。

人数上の利益があるか。


図3:エリアIIIでの3段階の判断フロー
図3:エリアIIIでの3段階の判断フロー


① アウトナンバーなら、そのまま速攻を続ける。

攻撃側が守備側より人数的に有利(2対1、3対2)なら、フィニッシュまで持っていく。


② ルーズな状態があれば、クイック・ブレーク。

「人数上の利益」はなくとも「ルーズな状態による利益」がある場合。マークマンが確認しきれていない。ポジションが定まっていない。この状態を見抜けるかどうかが、エリアIIIでの勝負。


③ どちらもなければ、セットに切り替える。

アウトナンバーもなく、ルーズな状態もなければ、無理に速攻を続ければターンオーバーになる。


この判断を「コントロールド・ファスト・ブレーク」と呼びます。ある条件のある場面においてはファスト・ブレークを使用し、条件のない場面においては使用しない。

走り続けるだけの速攻は、賢い速攻ではありません。


ここまでで、4エリアの全体像と、各エリアでの基本的な課題は掴めたと思います。

速攻を「走ること」ではなく「エリアごとの判断の連続」として捉える。この視点があるだけで、練習の設計も、試合中のベンチからの声かけも変わります。


ただ、正直に言えば、この「地図」が機能するのは、エリアの原則と選手の読みとタイミングが同時に揃ったときだけです。どれか一つが欠けると、練習でできていたことが試合で消える。これは本やコーチング動画を見ただけでは揃わないのです。


言い切りすぎかもしれません。県大会まで届かなかった私が5年間現場で見てきた限り、速攻が詰まるチームに共通しているのは「地図を知らない」ではなく「地図を誰がどう使うか」の設計が欠けていることでした。


簡単に言えることではないのですが、これは指導者の力量の話でもあり、練習設計の話でもある。


この記事を読み終えたら、速攻でレーンが重なる原因がどのエリアにあるかを自分で判断できるようになります。


有料パートでは次の内容を扱います。

エリアIVのフィニッシュの詳細、どの型をどう使い分けるか。各エリア間の移行で選手が迷う具体的なポイントと、その修正の声かけ。4エリアをチームに落とし込むための練習設計とコーチングキュー。そして試合映像をエリアで区切って振り返る方法。


…地図の存在はわかった。でも、地図を使って現場でどう動かすか。その手順がないと、記事を閉じた瞬間に月曜日の練習は先週と何も変わりません。


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Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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