オフェンス基礎
PR

「パスしたら動け」の先にある、もう一つのルール

Coach KAZU
記事内に商品プロモーションを含む場合があります




はじめに

「パスしたら動け」と言い続けて、何年になりますか


「パスしたら動け」と言い続けて何年になるか、自分でも数えたくない時期がありました。選手は頷いても、本番では立ち止まる。動くだけでは足りなくて、どの方向に動くかが決まっていないと、止まる理由のほうが多くなってしまうのです。連鎖反応方式は「動く方向」をパスの方向で決めるシステムでした。

「動け」は不十分で、「どこへ動くか」までを設計するべきでした。

練習ではできているのに試合で止まる。あの感覚、ご自身のチームでも、同じことが起きていたと思います。

以前は「選手が動かないのは意欲の問題」と思っていました。が、現場を見続けて分かったのは、これは動く意思の話ではないということでした。

これは選手の怠慢ではありません。

「動け」という指示に、方向がないのが問題です。

「パスしたら動け」は正しい。バスケットボールの攻撃における基本原則の1つです。しかしこの指示だけでは、選手の頭に「どこへ?」という疑問が残ります。右に動くのか。左に動くのか。ゴールに向かうのか。ボールから離れるのか。

選択肢が多すぎると、人は動けなくなる。

「パスしたら動け」の次に必要なのは、「どの方向に動くか」を決めるルールです。しかもそのルールは、個人の判断に依存しないもの。パスを出した方向やボールの位置から、自動的に決まるもの。

この「自動的に決まる」という発想を体系的に設計したのが「連鎖反応方式」です。

連鎖反応方式は、「パスしたら動け」の先にあるもう一つのルールを明確にしました。パス後の動く方向が固定されている。その方向が、次のプレーヤーの動きの「トリガー」になる。トリガーを受けた選手が動くと、さらにその動きが別の選手のトリガーになる。

5人が連鎖する。自律的に。コーチの声がなくても。

この記事では、連鎖反応方式の仕組みを分解します。

その土台となる「パッシングゲームの4つの基本原則」から始めて、連鎖反応がどう成立するのかを構造的に説明します。さらに、フリーランスの5つの基本原則がなぜ連鎖の「発展形」として機能するのかを示します。

最後に、明日の練習から使える段階的な導入方法を提案します。



思い込みの点検

「動く」だけでは足りない理由


まず、なぜ「パスしたら動け」だけでは不十分なのかを整理します。

5対5のハーフコートオフェンスを想像してください。ガードがウィングにパスを出します。「パスしたら動け」を知っている選手なら、パス後に動き出す。ここまでは良い。

問題はこの先です。

パスを出したガードがゴール方向にカットする。しかし同時に、ローポストの選手もゴール方向に動いている。2人が同じエリアに突っ込む。スペースが潰れる。パスコースが消える。せっかくの「動き」が、味方の邪魔をしている。

あるいは逆のケース。パスを出したガードがボールから離れる方向に動く。しかしその方向には誰もスクリーンを用意していない。ただフラフラと移動しただけで終わる。動いたけれど、何も生まれない。

どちらのケースも、選手は「動いている」。コーチの指示には従っている。しかしオフェンスとしては機能していない。

原因は明白です。動く「方向」に意味がないからです。

個人が個人の判断で動くだけでは、5人の動きは噛み合わない。Aの動きがBのスペースを潰し、Bの動きがCのパスコースを消す。全員が「動いている」のに、全体としては停滞している。

これが、多くのチームで起きている問題の構造です。


diagram

図1:1人の動き(カット)がDFを引きつける初動



核心

パッシングゲームの4つの基本原則


連鎖反応方式を理解するためには、まずその土台となる考え方を押さえる必要があります。それが「パッシングゲーム」の基本原則です。

パッシングゲームとは、決められたパターンを持たず、いくつかの基本的な原則に基づいてプレーヤーが自由に動く攻撃法です。モーションオフェンスとも呼ばれます。

その基本原則は4つあります。


原則1:パスをしたら動く(pass and cut / pass and screen)


最も基本的な原則です。パスを出したら、その場に留まらない。ゴール方向にカットするか、味方にスクリーンをセットするか。どちらかの形で動く。

これは単なる「動け」という精神論ではありません。パスを出した選手が動くことで、ディフェンスは2つの判断を迫られる。ボールを追うのか。パスした選手を追うのか。この判断の負荷がズレを生む。


原則2:ボールから離れる方向にスクリーンをセットする


スクリーンの位置に関する原則です。ボールの近くではなく、ボールから離れた場所にスクリーンをセットする。

なぜか。ボールの近くにスクリーンをセットすると、ディフェンスが密集する。密集すればヘルプが容易になる。ボールから離れた場所にスクリーンを置けば、ディフェンスの注意がボールに向いている隙を突ける。視野の外で動きを作れる。


原則3:適切なスペーシングを保つ


プレーヤー間の距離に関する原則です。近すぎれば1人のディフェンダーが2人をカバーできる。離れすぎればパスが通らない。適切な距離を保つことで、ディフェンスの1対1を強制する。

目安として4〜5メートルの間隔。フリースローレーンの幅が約3.6メートルですから、それより少し広い距離感です。


原則4:読みの能力を養う


最後は、ディフェンスの動きを読む力です。パターンオフェンスでは「決められた動き」に従えばよい。しかしパッシングゲームでは、ディフェンスの反応を見て判断する能力が求められます。

ディフェンスがオーバープレーしたら裏をカット。ディフェンスが下がったらシュート。ディフェンスがスクリーンにかかったらフリーの味方を探す。この「読み」が、パッシングゲームの質を決めます。

この4原則は優れた基盤です。しかし、ここにはまだ「方向の自動化」がありません。

原則1は「パスしたら動け」と言っている。原則3は「距離を保て」と言っている。しかし「どの方向に動くか」は、最終的に個人の判断に委ねられている。

だから、読みの能力(原則4)が未熟な選手にとっては、この4原則だけでは不十分なのです。判断力のある選手は自然に良い方向に動ける。しかし判断力のない選手は立ち止まる。チーム全体としては、上手い選手と下手な選手の差が広がるだけです。

教えていたのは動き方や形であって、判断の読みや優先順位ではありませんでした。

練習でできても試合で止まるのは、指導力ではありません。教えていたのは動き方でした。判断の読みと優先順位まで教えていなかったのです。

ここに「連鎖反応方式」が生まれた必然性があります。


diagram

図2:連鎖反応:1のカットが「トリガー」となり2人目(3)が空く


ここまでで輪郭は見えました。でも、これを自分のチームで明日からどう動かすのかは、まだ手順として腹に落ちていません。ここから先は、その手順と判断基準を具体的に組み立てるための内容です。

原則と読みとタイミングが同時に揃わないと、連鎖は起きません。本や動画だけでは揃わない部分があります。自力で組み立てるのは難しい、と正直に感じています。

言い切りすぎかもしれません。県大会まで届かなかった私が5年間見てきた限りの話です。全員に当てはまるとは言いません。

この記事を読み終えたら、ご自身のチームの練習で「明日から試す手順」が選べるようになっています。

ここから先が有料パートです↓↓

~ この続きをみるには ~

この続き:10350文字

登録すると続きをお読みいただけます
上記のリンクからご購入いただけます
ABOUT ME
Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
記事URLをコピーしました