個人ディフェンス
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クローズアウトの4要素:小刻みステップから最後の1歩まで

Coach KAZU
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はじめに

あの「最後の1歩」で、また止まれなかった


3Q終盤。逆サイドのコーナーにスキップパスが飛んだ瞬間、うちのウイングDFが弾かれたように走り出しました。

間に合う。そう思った瞬間、彼の足が前のめりに流れて、シューターの横を通り抜けていったんです。


フリーでスリー。沈む。ベンチの私は、声も出せませんでした。


帰りの車で、あの場面を何度も巻き戻しました。走るのは速い。体もついてきている。なのに、あの最後の1歩で必ず止まれない。

…気持ちはすごくわかります。クローズアウトは「全力で走って詰める動作」だと、私も長く思い込んでいました。

練習ではチェックに行けるのに、試合の最後の1歩で突っ込んで抜かれる。そのたびに「速く行け」と言ってきたのですが、何も変わらなかった。…それは、私の指示が半分しか届いていなかったからです。


以前は「詰めるのが遅いから打たれる」と思っていましたが、現場を見続けて分かったのは、そうではないということでした。速くなっても、止まれなければ同じことが起きる。教えていたのは「速く詰めろ」という距離でした。最後にどう止まるかという技術を、教えていなかったんです。


でも、ある時期から気づいたのです。クローズアウトは走る動作ではなく、止まる動作だったのだと。


最後の1歩で抜かれるのは、才能や運動神経の問題ではありません。止まり方を教わっていなかった問題でした。


思い込みの点検

「クローズアウトが遅い」は、速さの問題ではない


クローズアウトが機能しないとき、たいていコーチはこう言います。

「もっと速く走れ」「もっと早く出ろ」。

私も長いこと、そう言っていました。…まあ、言いたくなりますよね。目の前で間に合っていないから。


でも、選手の走るスピードを上げても、クローズアウトの失点は減らなかった。むしろ増えることさえあった。

なぜか。

全力で走れば走るほど、最後の1歩で止まれなくなるからです。勢い余ってシューターの横を通り過ぎる。急ブレーキで重心が浮く。つま先で止まって前のめりになる。


クローズアウトが機能しないのは、速さの問題ではなく構造の問題です。全力で走ることと、ボールマンの前で正しく止まることは、まったく別の技術。この2つを1つの動作として設計できていないから、クローズアウトは「間に合わない」か「行きすぎる」の二択になる。

クローズアウトは、ただ速く詰める動き方ではなく、止まり方の構造です。この見方が、ご自身のチームの指導を変える出発点になります。


(ちょっと雑談)

何年か前、ある練習後に選手の一人がぼそっと言ったんです。「コーチ、クローズアウトって、走るの速い方が上手いんですか?」と。

…うっ、と詰まりました。私は「速く走れ」とずっと言っていたのに、その言葉の先に選手が見ていたのは「全力ダッシュする動作」だったのです。本当は「走って、止まる」動作なのに、止まる部分を一度も分解して教えていなかった。

あの一言で、自分の指導が半分しか説明できていなかったことに気づきました。


核心

クローズアウトは4つの動作の連続である


クローズアウトは、4つの動作に分解できます。

【クローズアウトの4要素】

①スプリント:ヘルプポジションからマークマンに向かって全速力で距離を詰める。

②小刻みステップ(チョッピング):ボールマン手前で歩幅を細かく切り、減速する。

③ハンズアップ:減速と同時に手を挙げ、シュートをコンテストできる体勢にする。

④正面で止まる:チェスト・トゥ・チェストの距離で、前後左右に動ける体勢をつくる。


この4つが途切れなく連続する。スプリントから小刻みステップへ。小刻みステップと同時にハンズアップ。そして正面で止まる。

多くの選手はこの4つのうち、①と④だけを意識しています。走る。止まる。その間の②③が抜け落ちている。だから、最後の1歩で必ずバランスを崩す。


4要素の流れ:走る → 減速 → 構える → 止まる ①スプリント 全力で距離を詰める ②小刻みステップ 歩幅を切り減速 ③ハンズアップ 手を挙げコンテスト ④正面で止まる チェスト・トゥ・チェスト ①→②の切り替えが核心 ここが抜けると、最後の1歩で崩れる

図:クローズアウトの4要素の流れ


具体場面

失敗は2つしかない:行きすぎるか、浮くか


試合映像を見返すと、クローズアウトの失敗はほぼ2種類に集約されます。

【失敗パターンA:行きすぎる】

全力で走ったまま止まれない。ボールマンの前を通り過ぎる、あるいは突っ込む。オフェンスが一歩横にずれるだけで、もう追いつけません。

【失敗パターンB:止まったが、重心が浮く】

なんとか止まったものの、体が上下に揺れる。重心が高い。この状態でドリブルで切り込まれると、一歩目の反応が遅れます。守れる体勢になっていない。


どちらも、原因は同じです。

スプリントから小刻みステップへの切り替えができていない


全力のスプリントは大きなストライドで前に進む動き。これを維持したまま止まろうとすると、最後の1歩で必ず体が流れます。かかとで止まって重心が後ろに倒れる。あるいは、つま先で止まろうとして前のめりになる。

小刻みステップは、この問題を解決する技術です。ストライドを細かくすることで、いつでも止まれる状態を維持する。


【正しいクローズアウト】

走り出しは全力。ボールマンの手前で歩幅を細かく切り替える。減速しながら手を上げる。チェスト・トゥ・チェストの距離で、前後左右どこにでも動ける体勢で止まる。

選手への合言葉は一言で済みます。「全力で走り、手前で足を細かく刻め」


この一言が加わるだけで、クローズアウトの質は劇的に変わります。


核心の続き

止まってからが本番:3択への対応


クローズアウトはゴールではありません。ボールマンの前に立ってからが本番です。

ボールマンが持つ選択肢は3つ。シュート・ドリブル・パス。この3つに対応できる体勢でなければ、クローズアウトは成立していません。


シュートの場合。ハンズアップしている状態で既にコンテストの体勢にある。キャッチと同時にシュートモーションに入られた場合、手を上げたままコンテストする。飛びかかる必要はありません。手を上げているだけで、シューターの視界が遮られる。

ドリブルの場合。ドライブに対しては方向づけ(ディレクション)を行います。基本的にはミドルへのドライブを阻止し、ベースラインまたはサイドラインに追いやる。クローズアウトで正しく止まれていれば、この方向づけに自然に移行できます。

パスの場合。ハンズアップの状態で正面にいれば、パスコースは制限されます。ただし、背後のヘルプが薄くなる。チーム全体のローテーションとセットで考える必要があります。その具体的な設計は、有料パートで詳しく扱います。


つまりクローズアウトは、個人技術とチーム戦術の接続点です。この両方がなければ、クローズアウトは機能しない。


ここまで読んで、クローズアウトが「走る動作」ではなく「減速して止まる動作」であること、そしてチームのローテーションとセットの技術であることは、輪郭として見えてきます。

練習ではできるのに試合で止まる、あれです。選手の問題ではなく、間合いと歩幅と体勢、この3つが同時に揃わないと最後の1歩で止まれないという構造の問題で、一度もその構造を教えていなかった。だから止まれずに失点していた。詰める動作という判断から、減速、そして止まるという結果へつながる連鎖の起点が、丸ごと抜けていたんです。


でも、それはそうなんですが…。

明日の練習で、その切り替えを選手の体にどう刻めばいいのか。1対0のフォーム練習から、2対2のローテーション、5対5のシェルドリルまで、どんな段階で、どんな判断基準で組み立てるのか。スキップパスで連続クローズアウトが発生したとき、2人目・3人目はどの順序で動くのか。

では、どこから直すか。簡単に言えることではないんです。それは、止まり方には「間合い」「歩幅」「体勢」という3つの問題が同時に絡んでいるからです。


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ABOUT ME
Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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