「うちのオフェンスはこれでいいのか」を判断する基準
「うちのオフェンスはこれでいいのか」を判断する基準
練習試合のあと、「うちのオフェンスはどうだったか」を一言で言えなかった時期が、私には長く続きました。点が入ったかどうかだけで判断していたら、内容のある反省ができなかったのです。練習ではできるのに、試合になると後半に崩れる。その理由が「なんとなく」しかわからなかった。
以前は「もっと練習すれば変わる」と思っていました。が、現場を見続けて分かったことがあります。教えていたのは動き方でした。判断の優先順位を教えていなかったのです。
40対52。負け。それはいい。勝ち負けは相手もある。
問題は、負けた理由が「なんとなく」しかわからないことです。
シュートが入らなかった。それは見ればわかる。でも「なぜ入らなかったのか」の手前に、もっと根本的な問いがある。
うちのオフェンス、これでいいのか。
指導者同士で集まると、この話になったとき全員が黙ります。強いチームのコーチも、経験の浅いコーチも、口をそろえて「うちのオフェンスはまだまだだから」と言う。でもその「まだまだ」の中身を、具体的に言葉にできる人は少ない。
「セットプレーが足りないのか」「個人技が弱いのか」「フリーランスをもっとやらせるべきか」。選択肢はいくらでも浮かぶ。でも、どれが正解かがわからない。
この「わからなさ」の正体は、判断基準がないことです。
オフェンスの形を教えていても、判断を教えていなかった。そこに気づいたとき、どこか引っかかるものがありました。フォーメーションではなく、判断の構造を教えなければいけなかったのです。
これは指導力の問題ではありません。教える順序が逆だった、それだけの話なのです。
基準があれば、話は変わります。
練習試合のあとに「軸2の全員の関与が崩れていた」と言えるなら、次に何をすべきかが見える。選手が自分で判断して動く状態を作るために、今週何を練習すればいいかが決まる。不安が課題に変わるのです。
オフェンスの評価基準を、体系的に言語化したコーチがいます。1人ではなく、3人。それぞれ異なる角度から「よいオフェンスとは何か」を定義しています。
コーチ・ラップは「ショットの質」から語りました。コーチ・イーブスは「システムの設計思想」から語りました。そして「攻撃法の組み立て」から語りました。
3人の視点はバラバラに見えます。しかし重ねてみると、共通する構造が浮かび上がる。バラバラだからこそ、死角がなくなるのです。
この記事では、3人の基準のうち最もシンプルで鋭いものをまず紹介します。そして有料パートで、3つの視点を1枚のチェックリストに統合します。ご自身のチームのオフェンスを言葉で診断できるようになる。そういう使い方ができるものです。
コーチ・ラップは、よいオフェンスの基準を5つに絞りました。「オフェンシブ・プレー」と呼ばれるこの基本原則は、すべてが「どんなシュートを打つか」に集約されています。
第1原則:グッドショット
指定されたポジションに向けてのシュートのみを打つべきです。チームの目標は、全てのシュートをレイアップかそれに近いものにすべきだ、と。
ここが厳しい。「レイアップかそれに近いもの」が理想だと言っている。ミドルレンジのジャンプシュートでさえ、本来は妥協なのです。
第2原則:ロングショットの抑制
どんどんロングレンジを打てば、リバウンドのチャンスも少なくなり、防御側を拡大させる。ロングシュートは入る確率が低いだけでなく、外れたときのリバウンドも長く跳ねる。つまり攻撃のやり直しがきかなくなる。
第3原則:スクリーンショット
スクリーンを組んでのショットを狙うこと。1対1の突破力だけに頼らず、チームとしてフリーの状況を作ってから打つ。
第4原則:ターンオーバーの防止
ボール所有を失わない。リバウンドが最大限に効果的に使用されるよう、攻撃の動きを組織する。シュートを打つことと、ボールを失わないことは別の話です。両方を同時に満たさなければならない。
第5原則:パーセンテージショット
最高の成功率をあげるプレーヤーでなければ打つべきではありません。チーム内で最もシュート確率の高い選手にボールを集めるという発想です。
5つの原則を並べると、ラップの思想が見えてきます。
「オフェンスの目的はシュートを打つことではありません。よいシュートを打つことだ」。
シュートの本数ではなく、質。選手全員がゴール下に殺到するのではなく、システムとして最も確率の高いショットを選び取る。ここにラップの一貫した考え方があります。
これはオフェンスの「形」ではなく、「判断の構造」です。どのシュートを選ぶか。誰が打つか。いつ打つか。5原則はその答えを出すための判断軸なのです。
5つすべてが「よいシュート」に向かっている
ご自身のチームを、この5つで振り返ってみてください。
「レイアップかそれに近いシュート」をどれだけ打てていますか。ロングシュートの比率はどのくらいですか。スクリーンを使ったシュートは何本ありますか。ターンオーバーは何回ですか。チーム内で最も確率の高い選手が、きちんとシュートを打てていますか。
答えられなくても、問題ありません。答えられないこと自体が、大切な発見です。「何を見ればいいかがわかっていなかった」ということなのですから。
だから止まっていたのか、と思いませんか。「シュートが入らない」ではなく、「何を見ていいかわからなかった」という連鎖の起点。これが分かると、後半に崩れる理由も見えてきます。
必ず5原則を同時に意識すべきですが、でも個人差やチーム差があるわけですし、カテゴリーや学年によっても優先する原則は変わります。
ラップの5原則は、ここでお伝えできる「入口」です。
コーチ・イーブスが語った「システムを9つの論点で設計する方法」。さらに攻撃法を6つのプロセスで組み立てる方法。3人の視点を1枚に統合した12問チェックリストと4つの共通軸。これらは有料パートに入っています。
言い切りすぎかもしれません。ただ、県大会まで届かなかった私が現場で使い込んで気づいたのは、原則と読みとタイミングが同時に揃わないと、オフェンスは試合でなかなか機能しないということです。それを一人で本や動画から組み立てるのは、正直難しい。
簡単に言えることではないのですが、「よいオフェンスの答え」は1つではありません。3人のコーチがそれぞれ違う角度から語っているのは、そういう理由だと思っています。
この記事を読み終えたら、ご自身のチームのオフェンスを「どの軸が弱いか」で診断できるようになります。そこから何を練習すればいいかが、はっきりと決まってくるでしょう。
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