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フリーランスは「自由」ではない:6つの原則

Coach KAZU
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はじめに

フリーランスは 「自由」ではない 6つの原則


「もっと自由にやれ」。そう声をかけたのにオフェンスが止まる。最初の数年は、それを選手の自主性のなさで説明していました。

でも、何シーズンか繰り返すうちに気づいたんです。自由という言葉には、設計がいる。原則のないところに自由を渡すと、それは放任にしかならないのだと。

フリーランスには6つの原則があって、その上にしか自由は乗らないんですね。


かといってパターンに振り切ると、今度は別の壁が出てきます。空いている選手が「パターンの次の動き」を優先して、目の前のシュートチャンスを見送ってしまう。パターン通りに動いて、パターン通りに止まる。

パターンにすれば窮屈。自由にすれば崩壊。

この振り子は、あなただけのものではありません。アメリカのバスケットボール史そのものが、ずっとこの2つの間を行ったり来たりしてきました。


正直なところ、以前は「自由」と「パターン」のどちらが正解か、その二択でしか考えていませんでした。試合の流れが止まれば「もっとパターンを徹底させよう」と決め、選手が窮屈そうにすれば「もっと自由に判断させよう」と切り替える。その振り子を、毎週繰り返していたんです。

引っかかる場面が出てきたのは、ちょうどその頃でした。同じ振り子のなかで止まるチームと、自由とパターンの中間でちゃんと機能するチームがある。その違いは、どこから来るのか。

試合を見続けて分かってきたのは、機能しているチームは「どちら寄りか」を選んでいるのではなく、原則という同じ床の上で、両方を行き来しているということでした。

自由と放任の境界線は、原則の有無で決まっていたんです。


言い切ってしまうと、フリーランスは「自由を渡すこと」ではなく、「原則を渡すこと」です。ここは強めに書きます。これに反する場面に、私はまだ出会ったことがありません。



はじめに

パターン化しすぎると、 プレーヤーの判断力を障害する


バスケットボールの攻撃法には4つの大きな流れがあります。パターンで精度を上げ、コンティニュイティで繰り返し、そのルーティン化が判断力を「かえって障害する」という気づきからフリーランスが生まれ、著名コーチがそれを体系化していく。


攻撃法の発達 / 4つの流れ

第1

パターン・オフェンスの発達

あらかじめ決められたフォーメーションから、決められたスコアリング・プレーを展開する。1940年代の大学チームから始まる「セット・プレー」の原型。

第2

連続的攻撃法(コンティニュイティ)

1回のスコアリング・プレーで決まらなかったとき、元のフォーメーションに戻ってもう一度展開できる。シャッフル・オフェンスがその代表。

第3

フリー・オフェンスの発達

パターンをルーティン化しすぎると、プレーヤーの状況判断を「かえって障害する」。この反動として生まれた攻撃法。

第4

著名コーチの攻撃法の普及

ジョン・ウッデン(UCLA)、ピート・ニューエル(カリフォルニア大学)。成功した攻撃法はコピーされ、広まり、また変化していく。

パターン化の反動でフリーランスが生まれ、それを著名コーチが体系化していく流れ


ここに見えるのは、バスケットボールの歴史が繰り返してきた一つの問い。

パターンか、フリーランスか。

答えは「どちらか」ではありません。その中間で「どこに折り合いをつけるか」。これがむずかしいのです。そしてその折り合いの付け方こそが、フリーランスの「原則」として存在します。



前提

マン・ツー・マン・オフェンスの3つの類型


マン・ツー・マン・オフェンスには3つの類型があります。


マン・ツー・マン・オフェンスの 3類型

パターン・オフェンス

あらかじめ決められた動きを展開する攻撃法(スタック・UCLA等)。教えやすく、選手も迷わない。ただし相手に読まれやすい。

コンティニュイティ・オフェンス

パターンが連続的に展開される(フレックスやシャッフル等)。1回で決まらなくても元の配置に戻って何度でも展開できる。

モーション・オフェンス(フリーランス)

原則だけ決めて、その上で選手が判断して動く。パッシング・ゲームとも呼ばれる、本記事の核心の類型。

パターン → 連続 → 判断の自由度を、3類型で段階的に整理


この3類型は明確に分かれているわけではありません。フリーランスは、あらゆるオフェンスの中にすでに存在している。パターン・オフェンスの中にも、フリーランスの余地は必ずあります。

(ちょっと雑談)

ゲームの中に、フリーランスの場面は2〜3分の1は出てくる。パターン通りにいかなかった場面、防御が予想外の反応をした場面。そこでフリーランスの能力がなければ、オフェンスは止まる。



核心

フリーランスを「機能させる」6つの原則


フリーランスは「自由にやれ」ではないんです。
原則があります。

パッシング・ゲーム(モーション・オフェンス)の4つの基本原則に、私の指導経験から2つを加え、
合計6つの原則として整理します。


POINT / この章で扱う 6つの原則

原則1 パスをしたら、動く

原則2 スペーシングを保つ

原則3 ボールから離れる方向にスクリーンをセットする

原則4・5・6 は本文後半でお渡しします

前半 1〜3 はパッシング・ゲームの古典的な原則。後半 4〜6 は、現場で「これがないと崩れる」と何度も気づいた追加分で、本文の核心部にあたります。

原則1:パスをしたら、動く


Pass and cut. Pass and screen.

パスを出して止まるのが、フリーランスが崩壊する最初の原因です。ボールを手放した瞬間、2つの選択肢がある。カットするか、スクリーンに行くか。立ち止まるという選択肢はありません。

パスをしたら動く。これが全ての出発点です。


原則2:スペーシングを保つ


フリーランスが崩壊する第2の原因は、スペーシングの崩れです。

1人のディフェンダーが2人のオフェンスプレーヤーを同時にカバーできる距離にいたら、それは人数で負けているのと同じ。適切なスペーシングとは、ディフェンダーに「どちらを守るか」の選択を強いる距離を保つことです。

目安は約4〜5メートル。近すぎればヘルプされる。遠すぎればパスが通らない。

フリーランスだからこそ、間隔は自分で保たなければいけない。パターンなら配置が決まっている。モーションでは、スペーシングの意識が自分の中にないと成立しません。


原則3:ボールから離れる方向にスクリーンをセットする


「スクリーン・アウェイ」とも呼ばれるこの原則。ボールがある方向ではなく、ボールから離れた方向にスクリーンに行く。

なぜか。ボール方向にスクリーンに行けば、そこにディフェンスが密集する。ボールから離れた方向に行けば、ヘルプ・サイドのディフェンスを動かせる。ボール・サイドに空間が生まれる。

モーション・オフェンスの本質は、ボールのないところで仕事をすること。サッカーの中盤の選手が試合の流れを作るように、コートの4人の動きが攻撃の8割を決めています。パスが出るよりも前に、ボールのないところでスクリーンが動いている。だからパスが出た瞬間に、もうフリーの選手がいる。

原則1:パスをしたら動く(カットかスクリーン)
原則2:スペーシングを保つ(4〜5mの間隔)
原則3:ボールから離れる方向にスクリーン



ここから先 / 3つの原則は本文後半で

前半 3つはパッシング・ゲームの古典的な原則。
残りの3つの原則は、現場で「これがないと崩れる」と何度も気づいた追加分です。

読みの精度、ディフェンスのほころびを掴む感覚、攻撃と守備の重心配分。
この3つが入って、はじめて 6原則は「機能する道具」になります。

後半の 3原則は、本記事の有料パートで、ドリル設計・判断軸・採点表とともにお渡しします。

前提

「自由」の量は、選手の成熟度で決まる


フリーランスの6つの原則を知っていても、それを実行できるかどうかは別の問題です。

これは明確です。フリー・ランスの能力は、プレーヤーの成熟度に大きく依存する。

初心者にいきなり「6つの原則で自由に攻めろ」と言っても、機能しません。パターンから始めて、判断力が育つにつれてフリーランスの比重を上げていく。これが正しい順序です。

逆に言えば、選手が成長してもいつまでもパターンだけで攻めていたら、その選手の判断力は育たない。パターンの中にフリーランスの余地を意図的に作り、「読んで判断する場面」を増やしていく。


成熟度 / パターンとフリーランスの配分

成熟度 パターン フリーランス
初心者 判断の経験が浅い 8 2
中級 原則が体に入りつつある 5 5
上級 読みで動ける 2 8

初心者ほどパターン寄り、上級になるほどフリーランス寄りへ段階的にシフト


コーチ、ピート・ニューエルの「コントロールド・バスケットボール」は、この発想の極めて洗練された形です。パターンで制御しながら、読みの余地を残す。選手の判断力を信頼しつつ、枠組みは握る。

フリーランスは、最終的にはコーチと選手の間の信頼の問題に行き着きます。


ここまでで、フリーランスの6つの原則と、成熟度との関係が見えてきたと思います。

でも「6つの原則を知っている」と「チームに導入できる」の間には距離がある。


6つの原則を知ったコーチが、次の月曜の練習で立ち止まる場所は、たいてい同じです。原則・成熟度・段階。この3つが同時に揃わないと、判断はチームから自然には出てきません。

POINT / 一人では揃えにくい 3つの条件

条件1:原則
6つの原則を、選手が共通言語として理解していること

条件2:成熟度の読み
いまのチームが、原則のうちどこまで担えるかを見極められること

条件3:導入の段階
6原則を全部一度に渡さず、優先順位を保って段階で入れること

どれかひとつでも欠けると、原則は判断に変わらず、6つは記号のまま終わります。

原則だけ伝えても、成熟度の読みがなければ早すぎる導入になります。
逆に、成熟度だけを基準にすれば、原則のない放任に戻ってしまう。

段階を踏まないまま6つを同時に渡せば、選手は何を優先すべきか分からなくなります。だから、この3つを同時に組み立てる作業は、本一冊や動画だけではどうしても届かない領域なんです。楽器のチューニングのように、複数のノブを少しずつ合わせていく仕事で、一人で揃えるには、正直、心細い


言い切りすぎかもしれません。もちろん、全員に同じ速度を保証するものではないし、チームレベルや学年によって順序の組み方は変わります。ただ、その「変わり方」自体が、原則の上に乗っているかどうかでまるで違う。これは、現場で繰り返し見てきたことです。


この記事を読めば、来週のハーフタイムで決めるべき一点が、6つの原則のどれに対応するかを、ご自分で選べるようになります。練習計画のどの場所に、どの原則を、どの段階で入れるか。その判断軸を、ご自身に持ってもらうのが、この記事でお渡ししたい順序です。


この記事が向いているコーチ

向いている方

  • 「自由にやれ」と言うと止まり、パターンにすると窮屈になる経験がある
  • 後半に同じ崩れ方を、毎試合のように見ている
  • 「指示待ち」から「判断主体」のチームに変えたい
  • ハーフタイムで何を言うべきか、判断軸を持ちたい
  • 練習メニューを「原則」から逆算して組みたい

今は別の道が合う方

  • 勝てるセットプレーの引き出しを増やすことが、いまの優先
  • 個人技術のドリルから先に手をつけたい
  • 短い情報だけで結論を得たい

ここから先で扱うこと

  • パス&カットとスペーシングを、段階的ドリルで選手の身体に入れる練習の組み立て方
  • 残り 3つの原則(読み・ほころびを掴む感覚・重心配分)のドリル設計と判断軸
  • チームの成熟度を見極める 5チェックポイントと、崩壊の 4兆候
  • 判断を育てる 6週間プログラムと、試合後の採点表

Q&A / 読みはじめる前に

Q. 中学生のチームでも導入できますか?

導入できます。ただし「6原則を一度に全部」は早すぎることが多いので、本文の段階的移行(完全パターン → パターン+1判断 → 分岐点に判断)から入ってください。判断の自由度を、3段階で少しずつ広げる順序です。

Q. シュート力が足りないチームでも機能しますか?

「機能する前提条件」を本文に節を立てて書いています。読みながら、いまのチームがその前提に届いているか確認できます。届いていない時期の練習設計についても、触れています。

ここまで書いたことで全部わかった、とはならないと思います。答えはない、というより、チームによって正解が違う問いがあります。何を最初の1原則にするか。その選び方は、続きで扱います。


[ ここから先は有料パート ]

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ABOUT ME
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Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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