オフェンスの3原則を押さえると、セットプレーが崩れても判断できる
セットプレーを3つ教えた。フォームは何度も確認した。でも試合になると、同じ場面で同じように止まる。
「練習ではできるのに試合で止まる、あれです。」正直、どこか引っかかっていました。教え方の問題なのか、選手の理解力の問題なのか。でも違いました。問題は、教えていたのは「形」であって、判断ではなかったことにあったんです。
フォーメーションの形は覚えているのに、本番で1つズレた瞬間に全員が固まる、という現象を何度も見てきました。原因は記憶力ではなく、原則が体に入っていないからだと気づいたのは、ずいぶんあとのことです。攻撃には3つの原則的プレーがあって、その3つが選手の中に入っていれば、形が崩れても動きは止まりません。
形を教えるのではなく、原則を入れるべきでした。
以前は「もっとセットプレーの数を増やせば解決する」と思っていました。が、現場を見続けて分かった。教えていたのは「動き方」。判断の優先順位を教えていなかったんです。だから形が崩れた瞬間、選手の頭が真っ白になる。指導力ではなく、何を教えるかの優先順位の問題だったんです。
ベンチに戻ってきた選手に聞きます。「今のプレー、どうした?」。返ってくるのは「タイミングが合わなくて」「マークがきつくて」。表面的な理由です。
この経験、あります。
セットプレーを増やせば解決するか。答えはNOです。
5つに増やしても、10に増やしても、同じことが起きます。形を覚えただけでは、試合では機能しない。
理由はシンプルです。
選手が「なぜこの動きをするのか」を理解していない。
セットプレーは「型」です。型には必ず「原則」がある。原則を知らずに型だけ覚えるのは、意味を知らずに漢字をなぞるようなものです。書けはする。でも使えない。読めもしない。
ディフェンスが想定通りに動くなら、型で十分です。
しかし試合のディフェンスは動きます。位置を変え、スイッチし、ヘルプに来る。ダブルチームを仕掛ける。ディナイを強める。型通りにいかない場面は、むしろ普通です。
型が崩れたとき、選手が頼れるのは原則です。「次に何をすべきか」を判断する基準。それが原則の役割です。
ではその原則とは何か。
、攻撃の目的を「得点すること」と定義した上で、攻撃には3段階の原則的プレーがある。
第一の原則。シュート。
防御者の頭越しにシュートすること。それが阻止されれば、フリーの位置を得てシュートする。攻撃の最終目的は得点です。すべてのオフェンスの動きは、このシュートに向かって設計される。フリーでシュートを打てる状況を作ること。これが攻撃の最上位の原則です。
第二の原則。ドライブ・イン、カット・インで防御を崩す。
シュートが打てなければ、ゴールに向かって切り込む。ドリブルで仕掛ける「ドライブ・イン」と、ボールなしで走り込む「カット・イン」。この2つのプレーで、防御の陣形を崩す。防御を崩すことで、第一原則のシュートチャンスが生まれます。
第三の原則。確率の高いレシーバーにパスを通す。
シュートも打てない。ドライブもカットもできない。そのとき、より確率の高い位置にいる味方にボールを「渡す」「つなぐ」。パスは目的ではなく、第一原則・第二原則を実行できる味方にボールを届ける手段です。
この3つ。たった3つです。
注目すべきは、この3原則に「優先順位」があることです。まずシュート。それが無理ならドライブカット。それも無理ならパス。この順番が重要です。
オフェンスとは「フォーメーション」ではなく「3択の判断構造」です。形ではなく、判断の優先順位を教えることがオフェンス指導の核心なんです。
図1:攻撃の3原則と優先順位:ゴールに近いほど優先度が高い
しかし、この3つを「知っている」状態と「体に入っている」状態では、見える世界がまったく違います。
例えば、よくあるモーションオフェンスの1手目。
ウィングにパスを出して、パサーがスクリーンに行く。
3原則を知らないコーチは、これを「パスしてスクリーン」と教えます。選手は形を覚えます。でも、なぜパサーがスクリーンに行くのか、理解していません。
3原則を知っているコーチは、違う教え方をします。
(ちょっと雑談)
「パスを出したら、ゴールに向かえ。まずシュートできる位置を狙え。スクリーンはその途中にある。ゴールに向かう動線上に味方がいるから、スクリーンになります。スクリーンが目的じゃない。第二原則のカット・インが目的です」
この説明を受けた選手は、スクリーンが効かなかったときも動けます。
なぜか。「ゴールに向かって防御を崩す」という原則が残っているからです。スクリーンが効かなければ、そのままカットする。ポストに入る。裏を取る。方法は変わっても、第二原則の「ドライブ・イン、カット・インで防御を崩す」は変わりません。
形を覚えただけの選手はどうなるか。スクリーンが効かないと止まります。「次の形」が分からないから。立ち尽くす。ボールを持っている味方を見る。ショットクロックが減っていく。
この差です。ご自身のチームを試合映像で見直すと、同じ場面が必ずあります。
原則を知っている選手は、形が崩れても判断できる。
原則を知らない選手は、形が崩れたら止まる。
セットプレーの「見え方」が変わるということです。各動きが3原則のどれに該当するか見える。「ここでカットして」ではなく「ここで防御を崩しに行け」と言えるようになる。選手に伝わる言葉が変わる。
図2:モーションオフェンス1手目を3原則で分解:パス→カット→シュート
この3原則のレンズを持つと、試合映像の見方が変わります。なぜこのチームのオフェンスが機能しているか。なぜ崩れているか。原因が同じ言語で見えるようになります。
見る目が変わると、教える言葉が変わります。教える言葉が変わると、選手の動きが変わります。
最終的に目指すのは、選手が自分で判断して動けるチームです。コーチが指示を出すより先に、「シュートが無理なら崩しに行く」と選手自身が動く。その状態を作ることが、3原則を教える目的です。
この3原則を「知識として知っている」だけでは、ご自身のチームで使えるようにはなりません。原則と、それをどう読み、いつ使うかのタイミングが同時に揃わないと機能しない。本や動画を見ただけでは揃わない。どこかが欠けます。
言い切りすぎかもしれません。県大会まで届かなかった私が言うことです。全員に当てはまるとは言いません。でも、セットプレーを何種類増やしても試合で止まり続けたチームを見続けてきた限り、この構造は変わりませんでした。
「3原則を知れば全てが解決する」とは言いません。それは簡単に言えることではない。答えは現場の練習の中にあります。
この記事を読めば、3原則のどこが欠けているかを選べます。ハーフタイムで言うべき一言が決まります。
ここから先は、3つの原則をそれぞれ深掘りします。
「シュート」を最優先にする指導とは何か。「ドライブ・イン、カット・イン」をどう設計すればいいか。「確率の高いレシーバーにパスを通す」ために何を教えればいいか。
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