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ウィークサイドを走れ:ボール転換の瞬間に起きていること

Coach KAZU
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はじめに

ウィークサイドを走れ ボール転換の瞬間に 起きていること


ファストブレイクに入るたびに「走れ」と叫んでいた時期がありました。でも3秒後、ハーフコートには5人が並んでいる。また始まる。叫ぶたびに、どこか引っかかるものがありました。何が違うのかは分からない。そういう状態が続いていました…


走力の問題ではないと気づいたのは、ずっと後のことです。教えていたのは「走る」こと。「ボール転換の瞬間に何を見て、どこへ走るか」は教えていなかった。

走らないのは、走力や根性の問題ではありません。ボール転換の瞬間に、どこを見てどこへ走るかを教わっていなかった。それだけだったんです。

言い切りすぎかもしれません。でも県大会まで届かなかった私が原典を読み直して気づいたのは、速攻の失敗の大半がこの一点に集約されていた、ということです。


ある指導者が住友金属チームを指導していたとき、まったく同じ壁にぶつかりました。走れる選手は揃っていた。でもアウトナンバーがつくれない。3線速攻を仕掛けても相手が先に帰ってくる。

そこで立てた問いが、すべてを変えます。

アウトナンバーがなくても、速攻で攻める方法はないか」。

この問いが、「クイック・ブレーク・パターン」の発見につながります。速攻には4段階ある。アウトナンバーの速攻だけに目を向けていると、残り3段階のチャンスを丸ごと捨てていることになる。

そして、その隙間を突く最大の武器が「ウィークサイドを走る選手」です。

トランジションの問題は未研究の命題」という言葉があります。掘り返されていない鉱脈が、まだそこにある。




はじめに

速攻を「1つの概念」で捉えていないか


速攻という言葉を聞いたとき、頭に浮かべる映像は何でしょう。リバウンドを取って3人で走り切るやつ、ですよね。

でも、それは速攻の一形態に過ぎません。

コーチング理論では速攻法を4段階に分類しています。アウトナンバーを活かす従来の速攻(a)。アウトナンバーがなくてもディフェンスの「組織されていない隙間」を突く速攻(b)。その後のアーリー・オフェンスへの展開(c)。さらに流れの中のフリーランス(d)。

多くのチームは(a)だけを練習している。アウトナンバーが成立しなければ速攻を終わりにする。残りの(b)(c)(d)の時間帯を、丸ごと捨てている。

この「捨てている時間帯」にどれだけのチャンスが眠っているか。それが本記事のテーマです。


diagram

図1 ── 速攻の4段階分類。(a)→(b)→(c)→(d)は連続体





核心

速攻の本質──ボール所有の転換と「不意」の原則


速攻の目的は「走ること」ではありません。

ボールの所有が転換した瞬間に、防御者をアウトナンバーにしてイージーショットを得ること」。これが定義です。

そして「ボール所有の転換が不意であるほど効果的」という原則があります。相手が予測していないときにこそ、速攻のチャンスは最大化する。

ボール所有が転換する場面は、1ゲーム平均60〜80回あるとされています。リバウンド、フリースロー後のリバウンド、バイオレーション、ファウル、ターンオーバー、ジャンプ・ボール。これらすべてが速攻の起点になる。

60〜80回のうち何回を速攻に転換できているか。多くのチームは10回前後でしょう。残りの50〜70回は、ただ「帰って、セットして、攻める」だけ。ここに巨大な機会損失がある。

速攻で得る得点は全得点の20〜30%と言われています。数字だけ見ると少ない。でもその大半はレイアップやフリーのジャンプショット。セット・オフェンスよりも成功率は高い。同じ1点でも、質が違う。




思い込みの点検

住友金属での発見──「走れるのに決まらない」問題


住友金属チームを指導していたとき、走力のある選手が揃っていました。リバウンドからの切り替えも速い。全力で走る。ところが肝心のアウトナンバーが成立しない。

相手のディフェンスも同じくらいのスピードで帰ってくる。5対5。走った分だけ体力を消耗して、得るものがない。

練習ではできるのに試合で消える、あれです。走れる選手がいるはずなのに、ゲームになると機能しない。

ここで発想を転換しました。「アウトナンバーをつくれないなら、アウトナンバー以外の利点を探そう」。

着目したのが「ルーズな状態」です。


「ルーズな状態」とは何か


ルーズな状態。定義は明確です。「防御者がまだ定位置についておらず、誰をマークするか確定していない状態」。

人数は5対5。数的優位はない。でも、組織的な防御が完成していない。ディフェンスはゴールに向かって帰っている最中で、マークマンを探している途中。この一瞬の混乱が「ルーズな状態」です。


diagram

図2 ── DFが5人帰っていても、マークが確定していなければ「ルーズ」。X3は3のマークに行けていない


この図を見てください。ディフェンスは5人帰っています。人数的には同数。でもX3を見てください。3がウィークサイドを走っているのに、X3はペイント付近で誰をマークするか決めかねている。3はフリーです。

アウトナンバーではありません。でも「マークが確定していない」という別の優位がある。

組織されたディフェンスと、組織されていないディフェンスは、同じ5対5でもまったく別物です。この「質の差」こそが、ルーズな状態を突く速攻の根拠です。

だから、速攻で「走れ」と叫ぶだけでは動かないんです。ボール転換の認知・スペースの選択・タイミング、この3つが同時に揃わないと、ウィークサイドは先にスペースへ届かない。選手一人の判断だけでは、なかなか揃わない構造です。




核心

ウィークサイドへのパス──クイック・ブレークの成功法則


ルーズな状態を利用する。理屈はわかった。では具体的に、どうやって攻めるのか。

答えは「ウィークサイドを走るプレーヤーへのパス」です。

ボールサイドにディフェンスの注意が集中する。逆サイドのウィークサイドには、その注意が届いていない。一見「横断パス」は危険に見えますが、ルーズな状態ではディフェンスにインターセプトする余裕がない。だから通る。

ただし、これを実際に機能させるには「走り出しのタイミング」「パスの高さ」「走者のコース」という3つの条件が同時に揃う必要があります。

この3条件を選手に伝えるための具体的な言葉と、練習での身につけ方は有料パートで扱います。


diagram

図3 ── 1が右に動き、DFの目線を集める。その裏で3がウィークサイドからゴールへカット


この図の核心はシンプルです。1が右にボールを運び、ディフェンスの目線が右に集まる。その瞬間に、左ウィークサイドの3がゴールに向かって走る。1から3へスキップパス。X3はペイント内にいて3のカットに対応できない。

ストロング・サイドに注意を引きつけて、ウィークサイドで仕留める。これがクイック・ブレーク・パターンの基本構造です。



応用

ここから先の話


ウィークサイドを使う。ルーズな状態を突く。構造が見えてきます。

ただ、ここで止まっているコーチが多い。

「分かった。でも自分のチームで、明日の練習で、どこから手をつければいいのか」が、まだ像になっていない。選手への言葉の選び方、週単位での積み上げ方、試合中にどう声をかけるか。それが分からないと、理解は空転したままです。

では、どこから手をつけるか。簡単に言えることではないんです。それは…


ここから先が有料パートです↓↓

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ABOUT ME
Coach KAZU
Coach KAZU
バスケの戦術を考える人
チームを強くするバスケ戦術を日々研究しています。中学・高校・社会人リーグでプレー。引退後にバスケコーチのライセンスを取得。現在は静岡で中高生を指導しています。SNS総フォロワー数3.6万人。戦術に関する本も執筆。
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