主攻撃法と補助攻撃法:2つの武器を持つチーム設計
練習試合の後半。
以前は、攻撃法を1つに絞れば選手が集中できる、と信じていました。が、現場を見続けて分かったのは、相手が読んできた瞬間に逃げ道がなくなるということです。1つに絞ることと、1つしか持たないことは別の話でした。主攻撃法と補助攻撃法の関係を整理してから、相手の対策に対する反応速度が変わったのです。
攻撃の柔軟性は、数の問題ではなく構造の問題でした。
練習ではできるのに試合で攻撃が止まる。「何か別のことをやれ」と言いたい。でも、「別のこと」を準備していない。
タイムアウトで伝えられるのは、「もっと強く当たれ」「気持ちで負けるな」。戦術的な引き出しがないから、精神論に逃げるしかない。
この経験、覚えがあると思います。
問題は気持ちではありません。武器が1つしかなかったということです。
まず、この事実を正面から受け止める必要があります。
すべての防御法に対して万能に機能する攻撃法は存在しない。
マンツーマンを崩すために設計されたスクリーンプレーは、ゾーンには刺さらない。ゾーンアタックの原則は、マンツーマンの場面では機能しない。
練習ではできるのに試合で止まる。後半に形だけ真似て崩れる。あれは攻撃法の問題ではなく、フォーメーションではなく、構造と判断の問題だったのです。教えていたのは「形」と「動き方」。判断の優先順位を教えていなかった。判断→動作→結果の連鎖の起点が抜けていたから止まっていたのです。
だから、個々の防御法に対応した攻撃法を準備することが必要になる。
ここで攻撃の引き出しを増やそうとするコーチが行き着くのが「マルチプルオフェンス」です。つまり、複数の攻撃法を持てばいい、という発想。気持ちは分かります。でも、この発想が罠になります。
マルチプルオフェンスの落とし穴
理屈は正しい。でも、現実は違います。
有限の指導時間では、個々の攻撃に対する指導時間を多く割くことになり、マスターしきれないままに多くの攻撃を指導することになる。
これは、すべてのチームに共通する問題です。
攻撃法を5つ持っているチームと、1つを徹底的に磨いたチーム。試合で強いのは、たいてい後者です。中途半端に多くの武器を持っても、どれも使いこなせなければ意味がない。
よくある失敗:大会前に「あれもこれも」と詰め込む。結果、どのオフェンスも中途半端。選手が迷い、判断が遅れ、ターンオーバーが増える。
図1:攻撃法を増やすほど、1つあたりの習熟度は落ちる
「オールパーパスオフェンス」という考え方
では、どうするか?
ここで重要になるのが「オールパーパスオフェンス」という考え方です。これは「マルチプル」「マルチフォーメーション」「マルチバリエーション」の考え方です。
つまり、1つの攻撃法の中に複数のバリエーションを組み込む。攻撃法の「数」を増やすのではなく、1つの攻撃法の「幅」を広げる。
しかし、これだけでは足りない。
しかし、答えはもう一歩先にあります。それが「主攻撃法」と「補助攻撃法」の2層構造です。
主攻撃法とは、チームが最も時間をかけて練習し、最も高い習熟度で展開できる攻撃法のことです。
チームの「背骨」。これがなければ、何も始まらない。
南加大学のコーチ、サム・バリーは独自のオフェンス体系を築き上げ、それをチームの主軸としました。オクラホマA&M;大学のコーチ、ヘンリー・アイバもまた、自らの攻撃法を徹底的に磨き上げ、そのチームの最大の成功をもたらした。カリフォルニア大学のコーチ、ピート・ニューエルの「コントロールドバスケットボール」も同様です。
彼らに共通するのは、「たくさんの攻撃法を知っている」ことではなく、「1つの攻撃法を極めている」ということ。…まあ、当たり前と言えば当たり前なんですが、いざ自分のチームに当てはめると、そこから逃げてしまうことが多い。
主攻撃法の3つの条件
理論を整理すると、主攻撃法には3つの条件が浮かび上がります。
条件1:プレーヤーの能力を最大限に活かせること 各プレーヤーの得意技を攻撃法の中に組み込める設計になっていること。エースの1対1も、ビッグマンのポストプレーも、3ポイントシューターの能力も。チームにいる人間の特性が、そのまま攻撃の強みになる。
条件2:連続性(コンティニュイティ)を持つこと 1回のスコアリングプレーで決まらなかったとき、元のフォーメーションに戻ってもう一度展開できる。1回で終わる攻撃は、主攻撃法にはなりえない。
条件3:フリーランスの余地があること パターン通りにいかなかった場面で、プレーヤーが自分の判断でプレーできる余地がある。ゲームの中でフリーランスの場面は2〜3分の1は出てくる。その場面で止まるような攻撃法は、主攻撃法として機能しない。
図2:主攻撃法は「活かす」「続く」「自由がある」の3条件を満たす
マンツーマンオフェンスは7つの構成要素から成り立っています。フォーメーション、エントリー、スコアリングプレー、コンティニュイティ、リセット、オプション、フリーランス。
この7つのバランスが、そのチームの攻撃の「型」を決める。
主攻撃法を選ぶということは、この7つのバランスをどこに置くかを決めるということです。
(ちょっと雑談)
チームの弱点を補完するためのシステムを構築し、対戦相手の防御法に対応した攻撃法を準備する。この2つの視点が、主攻撃法の設計には欠かせない。
強豪と呼ばれるチームのほとんどは、主攻撃法(メインオフェンス)だけでなく、補助攻撃法を持っています。
補助攻撃法の種類は、大きく3つに分けられます。
① セットプレー(一回限りのプレー)
あらかじめ決められた動きを1回だけ展開する。タイムアウト明けや、試合の重要な局面で使う「切り札」。成功しても失敗しても、1回で完結する。
② スペシャルプレー(特定の場面用のプレー)
残り時間が少ないとき。1点差で追いかけているとき。特定の選手をフリーにしたいとき。場面が限定された攻撃法。
③ アウトオブバウンズプレー
サイドラインやエンドラインからの再開。これも立派な攻撃の機会です。
これらの補助攻撃法は、主攻撃法が機能しないときの代替手段として準備されるものです。それ自体は難しい話ではない…んですが、どれをどのくらい練習するかの配分が、意外とあいまいなままになっています。
図3:主攻撃法に練習時間の大半を割き、補助で補完する
主と補助の配分が、チーム設計の核になる
ここが、この記事の最も伝えたいところです。
攻撃の指導力ではありません。配分の設計を持っているかどうかの問題でした。
攻撃法の数を増やすのではなく、主攻撃法と補助攻撃法の「配分」を設計する。
練習時間の70〜80%を主攻撃法に充てる。残りの20〜30%で、補助攻撃法を準備する。この比率を守ることで、習熟度を保ちながら対応力を持てる。ただし、カテゴリーや学年によってこの割合は変わります。一概には言えません。
言い切りすぎかもしれません。でも県大会まで届かなかった私が現場で見てきた限り、「主攻撃法の原則と読みとタイミングが同時に揃わないと判断は出ない」のです。本や動画だけでこれを揃えるのは難しい。
攻撃法の戦略的な考え方として、3つの視点があります。
1)各プレーヤーの得意技を攻撃法の中に組み込む。
2)チームの弱点を補完するためのシステムを構築する。
3)対戦相手の防御法に対応した攻撃法を準備する。
この3つのうち、1)と2)は主攻撃法の設計で対応する。
3)は、補助攻撃法の役割です。
図4:主攻撃法を軸に、場面に応じて補助攻撃法を差し込む
ゲームの中で攻撃法を変える判断。これはコーチの最も重要な仕事の一つです。
主攻撃法が機能しているうちは、それを続ける。相手がディフェンスを変えてきたとき、初めて補助攻撃法を使う。
逆に言えば、補助攻撃法を出すタイミングを判断できることが、コーチの力量そのものです。必ずこの判断力は鍛えられます、でも個人差やチーム差があるので時間はかかります。全員に当てはまるとは言いません。でも試合の流れを読む力は、ここにあると感じています。
ここまでで輪郭は見えました。でも、これを自分のチームで明日からどう動かすのかは、まだ手順として腹に落ちていません。どこか引っかかるものがありませんか。「主と補の比率は分かった、でも実際の自分のチームに当てはめたとき、何から手をつければいいのか」という感覚です。ここから先は、その手順と判断基準を具体的に組み立てるための内容です。この記事を読めば、自分のチームで主と補の配分を設計して試合中の切り替えを判断できるようになります。
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